2007年03月02日

J-REITの資産運用報酬を考える -その実態と運用会社評価指標としての課題-

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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■見出し

1. 運用会社評価指標としての運用報酬
2. 運用報酬の体系
3. 運用報酬水準の比較
4. 運用会社評価指標としての課題

■introduction

誕生して5年以上が経過したJ-REIT(不動産投資信託)市場は、2007年1月末現在、40銘柄、時価総額で5兆円を超える規模となった。
個々投資法人(以下J-REITという)に対する市場の評価は、当初、分配金利回りを重視する債券的な評価から始まり、その後、東京都心オフィス賃料の反転や主に私募系ファンドを設立母体(スポンサー会社)とするJ-REIT上場が相次いだ2005年夏頃から、セクターやスポンサー会社の知名度、時価総額の大きさなどを基準に銘柄を選別する、いわゆる「銘柄の二極化」が進行した。しかし、最近では外人投資家などの旺盛な需要を背景に、公募価格割れした銘柄数は減少し、銘柄間の評価格差はやや修正されつつある(図表-1)。
償還がなく法人税が免除された上場公募投信であるJ-REITの使命は、小口資金を集め、変動リスクが小さく質の高い投資適格不動産に選別投資し、賃貸事業からのキャッシュフローを長期的に維持・向上させ、安定したリターンを投資主に提供することにある。J-REITは自ら資産運用できないため、運用を投資信託委託業者(以下運用会社という)に委託(外部運用)することが定められており、運用会社は投資主利益を最大化するため、不動産の投資・保有に係わる運用戦略の策定・実行の受託者責任を担っている。したがって、J-REITの価格は、短期的には景気サイクルや市場の需給(投資家ニーズ)の影響を強く受けるものの、中長期的には運用不動産の質とそれを維持・向上させる運用会社の能力に左右されると考えられる。
運用会社を評価する指標には、運用実績など定量的なものだけでなく、彼らの持つ運用ノウハウ、情報収集体制、人材の質・量、組織の安定性、コンプライアンス遵守体制といった定性的なものがあるが、運用会社が得る運用報酬も定量的に把握できる指標のひとつである。本来、投資家は費用対効果の観点から、運用能力の高い運用会社に対しては報酬が少々高くても進んで運用を委託するが、能力が低ければ報酬が安くても委託せず、能力が同等と評価すれば報酬の安い運用会社を選択するはずである。
そこで、現在上場しているJ-REITの運用報酬の比較を以下で試みる。

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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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