2006年12月25日

地方公共団体の債務償還と実質公債費比率 -地方債協議制度移行後の普通会計決算を踏まえて -

経済研究部 主任研究員   石川 達哉

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1.
2006年度から地方債協議制度への移行が実施された。この中で、地方財政計画の下で償還財源が保障される枠組みは堅持されており、地方債発行に対する管理のあり方が再編されている。すなわち、元利償還費や決算赤字が一定水準を超えない団体における地方債発行が原則的に自由になった一方、その条件を満たさない団体は公債費負担適正化計画の策定を求められ、地方債発行に許可を要するという所謂「早期是正措置」の対象になっている。そのための適切な管理を行うために導入された新しい決算指標が「実質公債費比率」である。
2.
実質公債費比率の基本的な考え方は従前の起債制限比率と同内容ながら、元利償還費を測る指標としての細部の規定が明確化され、具体的かつ詳細な基準が列挙されている。特に大きな改正点は、満期一括償還方式地方債の減債基金に係る積立に関して、積立不足の算入も含めてルールが統一化されたこと、普通会計が負担する他会計や関連団体の準公債費の算入範囲が明確化され、実態的に拡大したことである。その結果、2005年度決算における実質公債費比率は、47都道府県の平均値が14.5%、777都市の平均値が15.3%と、それぞれの起債制限比率の平均値を2.1%、4.2%上回る結果となっている。都市を人口規模で分類すると、実質公債費比率の水準も、実質公債費比率と起債制限比率の差も、政令指定都市を除けば、人口規模が小さいグループほど平均値が高く、小規模都市における公債費負担の重さを示している。
3.
「早期是正措置」の対象団体判定に際して、起債制限比率14%という旧基準と実質公債費比率18%という新基準の整合性は、実際の決算数値において保たれている。まず、都道府県に関して、「起債制限比率14%以上かつ実質公債費比率18%以上」の3県、「起債制限比率14%未満かつ実質公債費比率18%未満」の37都府県を合わせた40都道府県(全体の85%)に対しては、新旧どちらの指標を採用しても判定結果が変わらない。都市に関しても、「起債制限比率14%以上かつ実質公債費比率18%以上」の75都市、「起債制限比率14%未満かつ実質公債費比率18%未満」の591都市を合わせた666都市(全体の86%)において、新指標と旧指標に基づく判定結果が一致する。残りの都市に関しては、「起債制限比率14%未満、実質公債費比率18%以上」に79都市が該当するのに対して、「起債制限比率14%以上、質公債費比率18%未満」には32都市しか該当せず、新指標の方が相対的に厳しい判定結果を示すと言える。
4.
実質公債費比率の算出ルールが細部まで明確化している半面、算出過程が複雑なために、一覧性のある既存の決算統計の範囲では、公表値を再現することが極めて困難である。ただし、実質公債費比率と起債制限比率との差と、積立金現在高や地方債現在高などとの間には約0.5の相関係数が観測できる。人口規模に基づく分類など財政構造の類似した団体毎に、これらのデータを併せ見ることを通じて、各団体における実質公債費比率の公表値がどのような要因に基づくものであるかをおおまかには推測することができる。
5.
実質公債費比率が表しているのは、基本的にはフローの公債費負担の重さである。債務償還を最優先した場合に何年で完済できるかという意味での債務償還能力は、「地方債現在高-財政調整基金現在高-減債基金現在高-実質収支+債務負担行為による翌年度以降支出予定額」を分子、「償還元金+追加的に充当可能な一般財源等-災害復旧事業費」を分母とする算式で定義することができる。この債務償還能力指標を計測すると、都道府県に関しては、その計測値と実質公債費比率との間には相関関係は見られず、実質公債費比率と起債制限比率の差との間に緩やかな正相関が観察される。都市に関しては、債務償還能力指標と実質公債費比率との間に正相関が見られるが、相関係数は高くない。このように、実質公債費比率は、地方公共団体の債務償還能力も含めて、ストックの要素も体現しているが、完全なものではない。
6.
実質公債費比率は数値を見るだけでも意義のある指標であるが、それだけでは多くのことを把握することは出来ない。指標として一層信頼され、活用されるためにも、一覧性のある決算統計の上で背景情報の開示が望まれる。

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経済研究部   主任研究員

石川 達哉 (いしかわ たつや)

研究・専門分野
財政・税制、家計貯蓄・住宅

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