2006年12月25日

ライフデザインの新世紀(その2)-長寿社会の暮らし方-

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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1.前号(ニッセイ基礎研所報43号:2006年10月)では、「ライフデザインが必要な時代」と題して、人生が長期化し主要なライフイベントが先送りされ、暮らしの単位ともいえる世帯・家族の形態が多様化していることを提示した。今回は「長寿社会の暮らし方」というテーマで、「人生80 年時代」という長寿社会をどのように生きるのか、(1)雇用・就労、(2)家計、(3)住宅・すまい、(4)健康の4つの分野から考えてみた。
2.
日本は本格的な人口減少時代を迎え、今後、生産年齢人口が大幅に減少し、一定の労働力を確保するためには女性や高齢者の雇用・就労は不可欠になる。一方、公的年金の支給開始年齢の引き上げにより年金受給までの新たな所得確保が求められ、高齢期の雇用・就労は一層重要となる。今後は高齢者の雇用・就労を促進しつつ、高齢期を豊かに暮らすための新たな働き方が必要になろう。
3.
少子高齢化の進展は、所得や支出の構造にも大きな影響を与えている。所得は公的年金・恩給への依存度が高くなり、世帯の縮小により世帯の支出効率も低下している。高齢者世帯は全体としては貯蓄が多く負債が少なく豊かであるが、今後は所得と支出、貯蓄と負債など高齢期の家計をめぐる特長を活かした新たな所得の確保が必要だ。
4.
日本の住宅総数は世帯数を1割以上も上回り、量的には充足している。しかし、毎年空き家が増加しており、多様化する世帯構造に対して既存の住宅ストックがミスマッチを起こしている。少子高齢化の進展により一人暮らしや夫婦のみなどの小規模世帯が増え、高齢期による加齢対応住宅などが不足している。今後、高齢者が安全に安心して暮らせる高齢期に適した住宅・すまいを確保することが重要になる。
5.
高齢者の7割は加齢にともなう何らかの身体的な影響があり、3人にふたりは通院している。国民医療費は約32兆円に上り、65歳以上の医療費がその半分を占める。また、介護保険サービスの利用者も倍増している。今後は世帯の縮小とともに家族介護力が低下し、介護者の高齢化による老々介護の問題も一層大きくなる。このような高齢社会ではできる限り医療や介護に依存せずに健康寿命を伸ばすことが求められる。
6.
成熟した社会には人の数だけ多様な価値観があり、百人百様のライフデザインが描けることが豊かな社会といえる。ただし、そこに共通することは、高齢者が豊かに暮らすことが次世代に負の遺産を残すようなライフスタイルであってはならない。ライフデザインにも持続可能な社会をつくるという観点が重要であろう。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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