2006年07月21日

過剰流動性への懸念を強めるECB

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  • 7月6日のECB政策理事会後の記者会見で、トリシェ総裁は、物価安定のリスクに対するスタンスを、過去3回利上げ前月の記者会見で用いてきたキーワードである「警戒(exercise vigilance)」で表現した。これを受けて、8月3日の政策理事会で利上げに踏み切るとの見方が広がっている。
  • 3カ月に1度のECBの経済見通しの公表と同時に利上げという従来のパターンを崩し、8月の利上げの地ならしに動いた背景には過剰流動性への懸念の高まりがある。住宅ブームやM&Aの活発化を背景に、6月のM3増加率は前年比8.9%とユーロ発足以来の最高となり、中長期的なインフレ・リスクとして警戒を強めた。
  • 4度目の利上げで政策金利が3.0%に達した後もECBの金融環境に対する判断は「緩和的(accommodative)」に留まるであろう。年末にかけて想定されるのは、原油高、ユーロ高、世界景気の減速という環境だ。市場が織り込んでいる中立水準までの利上げを正当化するだけの景気の強さが持続するかは、微妙な状況にある。
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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

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