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- 中高年男性の定年に関する基礎研究II
1.
本稿では、引退過程を「退職後の変化期」「退職後の安定期」の2期に分け、さらに現在就労中の「現役期」を加え、3つのカテゴリーを使って、引退過程における人間関係の再構築の状況を検討した。また、生活満足度を従属変数として、3種類の引退過程において生活満足度に寄与する独立変数を導き出し、引退過程での生活状況を浮き彫りにすることを試みた。
2.
生活満足度が人的資源の指標である「人的関係量」と「団体組織加入量」に規定される様相を上記3期において比較した結果、退職変化期と退職安定期の中高年層では、生活満足が人との関係量では説明できないことが明らかになった。つまり、退職変化期においては人的関係の再編、安定期には量的な関係から質的な関係への変化などがその原因と考えられる。
3.
退職後の時間が経過して安定期に入っている世代は、自分自身が中心となって活動ができる趣味型の組織へのコミットメントを強めている。変化期にある中高年層もおそらく強制力のある様々な地域活動から徐々に自分のペースで活動できる趣味型へと変容していく可能性があることが読み取れる。
4.
就労収入から年金収入に変わった退職者層は、勤労収入を持つ現役層に比べ、家計経済の満足が自分自身の生活満足に強く寄与していることが明らかになった。現役層は家計経済に加え仕事を生活満足度の糧にしている傾向が読み取れる。
5.
現役層、退職安定期層ともに仕事よりも仕事以外と生活満足度の関係が強く出ている。しかし、変化期層は仕事も仕事以外の生きがいにも同様の満足度を得ている。おそらく将来的には安定期層のように満足の中心が仕事から仕事以外に変化すると考えられるが、まだ、仕事から離れて間もないために現役世代よりもむしろ仕事に強く規定された印象を受ける。
6.
退職変化期に中高年男性の人的なネットワークが再構築される。また、退職後の家計経済への不安がある。こうした中高年男性の引退過程の実態を見ると、退職は人生においてかなり心身に影響を与える大きなライフイベントであり、経済面も含めて退職を契機に生活を一変させるよりも、すでに言われているように徐々にリタイアするソフトランディングが重要であると考える。
岸田 宏司
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