2005年06月25日

21世紀☆市民社会のデザイン -「豊かな公・小さな官」の実現に向けて-

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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1.
2005年4月、政府は「日本21世紀ビジョン」を公表し、2030年の目指すべき将来像を提示した。今後、本格的な人口減少時代を迎え、持続的な活力ある社会を築くためにはどうすればよいのだろうか? 本稿では、同ビジョンの「豊かな公・小さな官」を実現することが極めて重要だと考え、その実現に向けた様々な社会制度改革の現状や新たな市民社会の実現に向けた動きと今後の課題について考察する。
2.
公的セクターに市場原理を導入し行財政の効率化を図り「小さな官」を実現するために、ニュー・パブリック・マネジメント(NPM)が関心を集めている。その代表的な手法として公共施設等のインフラ整備を効率的に行うPFI事業や「公の施設」の管理を民間企業やNPOにも開放する指定管理者制度、官民競争入札制度である「市場化テスト」の導入が検討されている。一方、「豊かな公」を実現するためにNPO(民間非営利組織)の役割が一層重要となり、その支援制度や新たな非営利法人改革の動きも見られる。
3.
市民社会での地域課題を解決する方法として、地域の中で地域の人によって地域の資源を活用する社会起業家によるコミュニティビジネスが注目されており、これまでの市場経済に加えて社会的経済の役割が一層大きくなるだろう。また、市民活動を支援する金融機関や市民自らの市民金融の動きも見られ、預金者も自分のお金がどのように使われるのかという資金のトレーサビリティや地産地消への関心も高まっている。
4.
「豊かな公、小さな官」を実現するためには、「官」「公」「民」の協働を可能にする地域力が必要だ。規制緩和を行い、地方分権を進め、市民が主体的に行政とかかわることが豊かな地域力を育む。地域の人間関係資本であるソーシャルキャピタルの蓄積が、暮らしの豊かさに繋がり、21世紀の市民社会を作るうえで重要な鍵となる。
5.
今後は、できる限り規制を排除し、誰もが自由闊達に競争し、効率性を追及する大競争時代となる。しかし、それは機会の平等を確保した上で、競争がもたらす結果の不平等に対しても一定の配慮がなされた社会でなければならない。人口減少時代を豊かに暮らすためには、社会の安全ネットを形成する地域力を育むような21 世紀市民社会を作り、われわれはそのなかで一人ひとりの能力を十分活かしていかなければならない。

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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

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