2004年03月25日

金利低下時における住宅ローン期限前返済率の変動特性について  -ローン設定からの経過月数との関連性に着目して-

  志立 正弘

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日本で住宅ローン担保証券(以下、「住宅ローン担保証券」を、その英訳:Residential Mortgage Backed Securities の頭文字をとって、RMBS と表記)の残高が伸びてきている。RMBSは多数の住宅ローン債権を束ねたような金融商品であり、投資家へのキャッシュフローには住宅ローンの債務者が支払うキャッシュフローがほぼそのまま充当される。この商品特性上、RMBS は金利変動に伴ってキャッシュフローが変化する性質を持つ。具体的には、金利が低下すると、住宅ローンの借り手はより金利が低いローンへ借り換えを行うために、ローンを当初の予定よりも前倒しで返済する(=期限前返済)傾向があるので、RMBS の投資家へのキャッシュフローも、期限前返済されたローンの分だけ、当初の予定よりも前倒しされる。そして、この性質によって、RMBS の価格変動特性は一般的な固定利付債券と異なる特徴を持つ。金利低下時の固定利付債券の価格上昇率は、一般に残存年限が長い債券ほど大きいが、RMBSは上記のように金利低下時に期限前返済が行われることにより平均残存年限が短くなるので、その金利低下時の価格上昇率は固定利付債券よりも緩やかになる独特の動きをするのである。この価格変動特性を把握するには、金利低下時にどれだけキャッシュフローが前倒し(=期限前返済)されるかを定量的にモデル化する必要がある。
但し、モデル作成にあたって一般に注意すべきことは、データの特性に合ったモデルを選択することである。いかに数学的に洗練されたモデルを利用しても、それが現実のデータの特性に合わない場合、現実的な意味は小さい。住宅ローン期限前返済率のモデル化の場合も、徒に複雑なモデルを利用するのではなく、まず金利低下と期限前返済率の関係の特徴を実際のデータを用いて把握し、それに合ったモデルを利用することが重要だろう。そこで本研究では、住宅金融公庫が開示した過去の住宅ローン返済履歴データを用いて、金利低下と期限前返済率の関係の特徴を把握することを試み、特に金利低下と期限前返済の関係は常に一定な訳ではなく、ローン設定からの経過時間によって変化する特徴があることを示した。また、このようにローン設定からの経過月数によって金利低下と期限前返済の関係が異なる傾向があることを考慮せずにモデルを作成した場合、その結果は大きく変わってくることを示した。

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