2002年06月25日

中国社会保障の生成と展開に影響を与える5つの要因に関する考察

  沙 銀華

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1.
中国社会保障の歴史は、前期の「労働保険時期」と、現在にいたる「社会保障時期」に分けられる。本稿では「労働保険時期」を簡単に回顧し、「社会保障時期」の社会保障システム生成・展開の経済的な要因、人口問題との均衡、政府の政策主導および社会的な習慣との関係、また、欧米「福祉国家」の変容など中国社会保障に対する影響を考察し、中国の社会保障システムが抱える問題点の解決の見通しおよびその将来のあり方について、問題点を展開して実証分析する。
2.
中国の社会保障は、国情、経済成長の実情に合わせて、また、ヨーロッパの福祉国家の経験を生かして、先進国のモデルを参照しながら、国民の習慣にも合わせるように、中国独特のシステムを構築している。
3.
中国において、5つの要素が社会保障に影響を与えている。第一に、経済発展の中で産業構造の変化、経済発展の不均衡が社会保障に与える影響、第二に、高齢化、人口増加と連動する人口の変動によって年金基金や医療基金の空洞化が進み、それによる社会保障に与える影響、第三に、社会保障の役割分担の中で主役となる政府の政策(社会保障を左右する重要な位置にある)の動向が社会保障に与える影響、第四に、第一次産業の社会保障政策の制定や、非雇用者(非給与所得者グループ)を対象とする社会保障システムづくりは、発展途上国に共通する難題であるが、これが社会保障に与える影響、第五に、数千年の歴史を持つ中国では、社会保障が生成される前から、国・民族の伝統や習慣などに従って、家族を中心に構成員の養老や医療・介護を担ってきたが、その伝統と習慣などが社会保障に与える影響である。これらの5つの要素は、相互に密接に関係し、1つの整体として考えなければならない。
4.
社会保障は社会安定の「安全ネット」である。歴史上農民の暴動が起きやすかった中国において、「安全ネット」作りは、政府、執政党として、大変重要な任務である。特に、改革開放後の中国は、経済面はすでに市場経済の軌道に乗っているため、失業率の引き下げや農民の社会保障システムの構築など、社会「安全ネット」を完備することは、中国政府にとって、今後の大変重要な課題である。

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