2002年03月25日

日本国債(JGB)マーケットとゼロ金利政策 -“How the JGB Market Has Responded to the Zero-Interest-Rate-Policy”-

  竹田 陽介
経済研究部 チーフエコノミスト   矢嶋 康次

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  1999年2月以来、一時的な解除を経て、日本銀行のゼロ金利政策が現在、進行中である。長期金利の指標である日本国債(JGB)マーケットは、ゼロ金利政策に対してどのように反応してきたのか。本研究は、ゼロ金利政策の意図である、流動性の供与とデフレ懸念の払拭、この二つの観点からJGBマーケットに見られる変化について考察する。
まず、長期金利の決定に関する期待仮説(Expectations Hypothesis)に関して検定した上で、ゼロ金利政策がJGBマーケットに与えた影響について、フォワード・レートに着目しながら、実証分析を試みた。分析結果は、以下の通りである。
1.
全体として、期待仮説はJGBマーケットにおいて成立している。
2.
それと同時に、長期にわたって流動性プレミアムの存在が確認される。つまり、ターム・プレミアムは、満期の増加関数である。このことは、黒田(1982)で否定された流動性プレミアム仮説が、近年では妥当していることを意味する。
3.
ゼロ金利政策の期間において、更なる金融緩和に向けた政策変更の効果は、限界プレミアムを引き下げる方向に働いていた。とりわけ、2001 年3月19 日におけるゼロ金利政策の再導入は、多くの満期国債に対する限界的なプレミアムを、統計的に有意に低下させることに成功した。同様の点は、短期金融市場を分析した白塚・藤木(2001)によって、ゼロ金利政策の時間軸効果について確認されている。
4.
しかし、植田(2001)も指摘するように、長期国債の買切増額を決めた2001年8月14日以降、一時的にせよ、限界プレミアムの上昇が見られる。この点は、財政規律の喪失から市場参加者が、近い将来におけるインフレーションの発生を予期しつつあったことを示唆している。
5.
最後に、ゼロ金利政策と並んで、JGBの格下げの影響も、無視することはできない。Moody’s による日本の長期債務格付けの格下げを行った直後、限界的なプレミアムは、上昇してきた。とりわけ、2000年9月8日のAa2への格下げ、2001年12月4日のAa3への格下げは、統計的に見て有意な上昇を与えていたことがわかる。
以上の実証結果から、流動性の供与、デフレ懸念の払拭という二つの目的に即して、ゼロ金利政策を評価すると、
(1)
流動性プレミアムに関して、ゼロ金利政策は、流動性の供与を通じて減殺させることに成功している。とりわけ、ゼロ金利政策の再導入は、大きな効果を有していた。
(2)
インフレ・プレミアムについては、日本において物価連動債が存在しないことから厳密に分離することは不可能である(Kitamura(1997))が、植田(2001)の懸念にもある通り、長期国債買切増額を決定した直後に発生したプレミアムの限界的な上昇を、インフレ・プレミアムの変動であると見ることができる。しかしながら、この非伝統的なオペレーションによる効果は、一時的であり、むしろJGBの格下げによるプレミアムへの効果の方が、有力である。インフレ・ターゲティングの導入の前提となる中央銀行への信認は、JGBマーケットからは見えて来ない。

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