コラム
2001年04月13日

大幅に悪化した景況感3月日銀短観

経済研究部 専務理事   櫨(はじ) 浩一

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1.年明け以降の景気悪化を反映

今年に入ってから米国経済の減速が顕著となり株価はNY ダウもNASDAQ も大きく下落している。日本の輸出も米国経済減速の影響を受け、1月の輸出数量は前年同月比4.7%の減少、鉱工業生産指数も前月比マイナス4.2%の大幅落ち込みとなった。
   4月2日に発表された3月短観では企業の景況感は悪化し、先行きもさらに悪化懸念があることを示す結果となった。2000 年度の設備投資計画は全般に下方修正となり、2001 年度の設備投資計画は非製造業での大幅減少から大企業・全産業で前年度比4.7%の減少と、設備投資の減速が明確になった。経常利益は2000 年度下期が下方修正となり、大企業では2001 年度上期も減益が見込まれている。この背景には、米国経済の減速による輸出の鈍化や消費改善の遅れがあると考えられる。
   設備投資計画は、2000 年度の投資が前回調査に比べて下方修正となるとともに、2001 年度計画についても大企業・全産業で▲4.7%の減少と2000 年度の当初計画(2000 年3月短観)の前年度比▲0.6%よりも低水準となった。大企業・製造業の設備投資は2001 年度2.3%増の計画だが、下期に輸出の増加による利益の回復を前提としていることを考えると、年度途中で下方修正されていく可能性が大きい。

2.今後の推移は米国次第?

今回の短観の結果は昨年11 月時点での調査に比べて大幅に悪化している。2001 年度の大企業・製造業の増益率は、3.6%と2000 年度の25.3%から大幅に鈍化する見込みだ。しかも加工業種を見れば明らかなように、下期に大幅増益の期待がある。これは米国経済が早期に回復して、輸出が再び増加するという期待があるからだろう。そうだとすると今回の短観の結果は更に悪化の余地を残していると言えるだろう。
   日本経済が外需だのみの現状では円が軟調なのだけが明るい材料だ。輸出の鈍化にも関わらず輸入の伸びが高止まりして黒字が減少していることから、先行きさらに円安が進むという見方がある。ユニクロのような低価格の衣料品が日本の市場に定着したことや、緊急輸入制限が話題になっている野菜のように、日本の輸入構造が大きく変わったことから景気が悪くなっても輸入は減らないという見方もある。しかし繊維や食品の輸入の伸びに対する寄与は実際には大きなものではない。むしろ輸入増加の原因になっているのは、価格上昇による原油輸入の伸びと電子機器を中心とする資本財だ。2000 年度の設備投資は堅調で実質5.5%の増加とみているが、これが輸入の伸びの背景にある。しかし設備投資の先行指標である機械受注は今年に入ってから減少しており、先に見たように短観でも企業の設備投資計画は慎重なものとなっている。今後設備投資が鈍化から減少に向かえば輸入の伸びが大幅に低下するだろう。輸出の鈍化に注目があつまっているが、輸入の伸びも1月の24.4%増から2月はうるう年の影響もあって12.3%に低下している。黒字減少の動きが何時までも続くとは思えないから、このまま円安が続くことを期待するのは危険ではないか。
   円安で影響を受けるアジアの各国の反発もある。そもそも為替を円安に誘導して外需頼みで日本経済を回復させようという考え自体に無理があるのではないか。97 年のアジア通貨危機のときも95年に1ドル80 円を切るところまで上昇した円が、98 年には140 円台にまで下落する途中であり、基本的にドルに連動していたアジア通貨が円安で割高になってしまったことによ影もあった。 基本的に為替レートの操作を放棄している現在では当時ほどのインパクトはないはずだが、日本以外のアジア通貨も円につられて下落すれば、アジア各国の経済への影響も無視できない。世界全体のGDP の15%といわれる日本経済の規模を考えれば、外需頼みで回復するというシナリオが難しいことは明白だ。
   円安や外需頼みでなく日本経済を自力でどう立ち直らせるのか、明確な戦略が求められている。

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経済研究部   専務理事

櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)

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マクロ経済・経済政策

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