2001年02月01日

設備投資を下押しする企業行動の変化

小本 恵照

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1990年以降伸びが鈍化した設備投資
過去 20年間の推移をみると、設備投資には約4年の循環がみられるが、1990年を境に振幅が下方に大きくシフトしていることがみてとれる。1980年代は拡張期には前年比で10%を超える伸びが続き、低迷期でもマイナスになることは極めて希であった。しかし、1990年代に入ると、5%以下の低い伸びが一般的となり、低迷期にはマイナス幅が5%を超えることも珍しくなくなっている。また、GDPに占める設備投資の割合は、最近では15%程度にまで低下しており、1980年代後半はもちろん、1980年代前半をも下回る水準となっている。
1990年代に入ってからの設備投資の下方シフトは、1994年あるいは1995年を境にさらに2つの時期に区分することができる。前半は、バブル崩壊に伴う経済活動の全般的な停滞、地価・株価の下落、企業業績の急激な悪化などによって設備投資が落ち込んだ時代である。この時期の設備投資の落ち込みは大きいが、当時の経済活動の悪化状況から考えると意外感は少なく、従来からの企業の設備投資行動の延長線上として捉えることが可能である。
後半は、バブルの後遺症は一部残るものの、経済や企業の活動が正常な状況に近づく中で、企業システムの構造調整が進み始めた時代である。会計制度や法制度の改革が進められ、企業のガバナンス構造の在り方が問われだすなど、企業行動の与件となる経済の仕組みが大きく変動し始めた時代である。この時期は、景気循環的な要因よりも上記のような構造変化が、企業の設備投資に対する考え方が変化させ、投資額の下方シフトにつながったとみられる。

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