2001年01月01日

景気はピークを打ったのか?

  日本大学経済学部教授 小巻 泰之

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●景気は秋頃をピークに停滞へ
2000年秋頃まで、景気に対する見方は「2000年度の日本経済は民需中心の経済成長へと転換が進む。企業部門の改善が消費の拡大へと結びつき、99年度の経済を特徴づけた企業部門の明るさと家計部門の暗さという明暗の二極化は次第に解消されるだろう」と、景気は企業部門を牽引に回復基調をみていた。企業部門に関しては、予測どおり、設備投資が非常に強く、機械受注統計では先行きの設備投資も増勢を維持することが示唆されている。また、企業業績も大幅増益が続いている。民間消費はやや弱さがあったものの、景気は明らかに回復過程にあった。
こうした景気の改善を受け日銀はゼロ金利政策を解除するなど、政策面も景気中立型へ移行された(財政政策は景気刺激型のままと言えるが、地方自治体分を合わせると、結果的に景気中立ないし抑制的といえる)
しかし、その後、生産関連統計は2000年8月をピークに停滞が続き、直近発表の日銀短観(2000年12月調査)でも業況判断DI が足元停滞し、先行きは悪化を示した。残念ながら、景気は上述のように最も強気であった2000年秋頃をピークに明らかに停滞しているのである。


●景気停滞の原因
このように景気が停滞した理由としては、米国景気の鈍化から輸出が伸び悩んできたこと、民間設備投資の増勢がやや停滞してきたことが挙げられている。確かに、米国向け輸出は減少傾向にあり、設備投資も7-9月期法人企業統計をみると減速した様子が窺える。これまで景気を牽引してきた企業部門の環境に変化が見られるのである。
しかし、単純な景気循環論的な見方でも今回の停滞は予測できたのである。もともと、過去の生産サイクルからみると、生産活動は循環的に夏場にかけて極大点を迎える可能性が高かったのである。グラフは、過去4回の景気回復局面での鉱工業生産指数の前年同月比の平均と今回の動きを示したものである。
具体的にみると、景気回復初期の生産活動は、需要拡大と調整された在庫への対応などから、生産の動きは大きく増加する。しかし、生産活動は、需要拡大に追いつくようになる時期(景気の谷から15~16カ月程度後、下図)にピークを迎える場合が多い。もちろん、各々の経済環境の相違から必ずしも一致したものではないが、景気循環的には、生産活動は2000年8月頃、前年同月比ベースでピークを迎える可能性があったのである。こうした生産の動きと在庫を関連させると(下図)、在庫サイクルは「在庫積み増し」局面入りしており、最終需要の動向如何では景気そのものがピークを迎える可能性も示唆している。


●もう一つの経験則
一方、過去の事例はもう一つの経験則も示唆している。現局面のように景気は谷から15~16カ月目に一旦停滞したが、最終需要の拡大を受け回復を続けたのである。戦後では11回の景気拡張が確認されているが、その内8回は再拡大したのである。
とすると、3回は24カ月以内で景気後退したのも事実である。景気は現在20カ月近い拡張期にあり、このまま景気が停滞すれば戦後4回目の短命景気となる可能性も示唆している。
やや悪い材料が優勢だが、景気が微妙な局面にあることは間違いない。過度な悲観、楽観にとらわれることなく、正確な景気判断が求められる時期となっている。

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