1999年12月01日

M&Aの活発化と法律・会計制度変更

  小本 恵照

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大手銀行の合併や統合の発表が相次ぐなど、近年、わが国でもM&Aが非常に活発化している。大手企業のM&A件数の推移をみると、バブル期に増加したあと減少に転じたが、93年以降は大幅な増加が続いている。特に、今年は9月の時点で既に昨年実績を上回るなど、これまでにも増して活発な動きとなっている。
M&Aの中身をみると、80年代は日本企業による外国企業へのM&Aが多かったが、90年代は外国企業による日本企業へのM&Aが増加しており、内容に変化がみられる。
近年、M&Aが急増しているのは、バブル崩壊以降、景気低迷が続く中で、規制緩和、情報通信革命、企業活動のグローバル化などが進行したことによる。規制緩和は競争激化による業界再編を増加させ、情報通信革命は企業組織の在り方を変化させた。企業活動のグローバル化による、国際的競争の強まりは、国境を越えた企業の戦略的提携の重要性を高めているのである。
また、これら一連の動きが、メインバンクシステムの弱体化と相俟って、ROEやEVAといった収益性を重視する企業経営への転換を促したことも、M&Aを活発化させている無視できない背景であると考えられる。
以上のような経済的要因の影響は今後一段と強まりM&Aを促進させると予想されるが、ここでは、M&Aに関係の深い、近年の法制度や会計制度の変化の影響に注目したい。
まず、法律面では、企業再編を促進する制度の拡充が急速に進んでいる。持株会社の解禁は企業グループの再構築をスピードアップさせる「持株会社の解禁(97年12月)」、大型水平合併の障害を小さなものにする「企業結合ガイドラインの見直し(98年12月)」が昨年までに実施されている。また今年10月には、資金支出を伴わない買収を可能にし、100%子会社化を容易なものにする「株式交換・移転制度」の導入が行われ、来年には、事業売却による事業再編を容易にするとみられる「会社分割法」の導入が予定されている。これら一連の法整備はM&Aの手段を多様化させ、その活発化を促進させるとみられる。
次に、連結決算を重視する会計制度の変更が挙げられる。単体決算重視のこれまでの会計制度の下で、わが国企業のグループ経営はこれまで十分な成果を挙げてきていないのが現実である。東証1部上場企業1,000余社の単体決算と連結決算の最終損益を比較してみると、過去数年間にわたって、実に4割程度の企業で連結損益が単体損益を下回っている。すなわち、約4割の企業で、関係会社の損益が赤字なのである。今回の会計制度の変更は、連結範囲や開示内容を充実させるものであり、これまでの安易なグループ経営に大きな見直しを迫るものである。来年3月からの会計制度の変更を控え、製造業を中心に不採算な関係会社(事業)の売却を中心とする事業の見直しが進められていることは事実である。しかし、その見直しは緒についたばかりであり、当分の間は、収益性の向上を目指したM&Aによるグループリストラの活発化が予想される。

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