1999年09月25日

大型店出店規制の変化とその影響

小本 恵照

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1.
大規模小売店舗法(大店法)を中心とする大型店出店規制は、小売業関連規制の中で最も大きな影響を国民経済に対して与えてきたと考えられる。しかし、規制緩和が進む中で、大型店出店規制の中身は大きく変化してきている。
2.
1974年から施行された大店法は、80年代後半にかけては出店を強く抑制する運用が行われてきた。しかし、80年代末の日米構造協議等を契機に流れは大きく変わり、90年代は一貫して規制緩和が推進されてきた。そして、98年春に大規模小売店舗立地法(大店立地法)が成立した結果、大店法は2000年5月31日をもって廃止されることが決定した。
3.
新たに施行される大店立地法は、中小企業者の保護を目的とする大店法とは異なり、地域環境の保持を目的とする社会的規制である点に特徴がある。規制内容をみると、規制対象となる大型店の範囲や調整期間は、それぞれ店舗面積1,000平米超と1年以内となっており、大店法との差は実質的にはほとんどない。しかし、調整内容や調整手続きについては違いがみられる。前者については、大店法では、「店舗面積」、「開店日」、「閉店時刻」、「休日日数」の4項目に限定されていたが、大店立地法では特に項目は限定されていない。後者については、大店立地法は大店法に比べ、都道府県や市町村の意見が強く反映される調整手続きとなっている。
4.
80年代に大店法の規制がなかったと仮定して、大型店の増加面積を試算してみると、実際の増加面積の2倍程度の増加があったとしても不思議ではないことが明らかとなった。大型店は中小型店に比べ効率性に優れるので、大店法による大型店の出店抑制は、経済効率の低下による経済ロスを発生させていたと考えられる。試算によると、その額は年間1,000億円程度となる。
5.
規制緩和による出店コストの低下は、出店の量だけではなく、出店の内容にも影響を与える。簡単な立地モデルでその影響を考察すると、出店コストの低下によって、店舗の集積が進み、店舗クォリティの差別化が強まることが確認される。最近の、ショッピングセンターへの大手総合スーパーの共同出店などは、その一つの現われと考えることができる。
6.
実証的及び理論的分析結果からみると、大型店出店規制の影響は非常に大きい。2000年6月1日からは大店立地法が施行されることになるが、法の運用に当っては、規制による地域環境保全効果と経済効率の低下を上手く調和できるよう、地方公共団体の調整能力の向上が求められる。

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