1998年11月25日

「世銀 IMF 総会に出席して」

  細見 卓

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アジアの通貨・経済混乱のほとぼりが冷めない10月、 世銀IMF総会が開かれた。 世界経済の困難と混乱が容易に救済できそうもない見通しの下で、 世銀・IMF等の役割についても失望や非難が多く、 前向きに新しい取り組みを行なうという具体策がなかったことは残念であった。
総会の前に、 英国のブレア首相は、 問題をもう少し高いレベルの人達に議論をさせれば処理が可能であるかの如く、IMFの改革をG7でのテーマとしようという提案を行なった。 しかし、 これについては英国内においてすら、 実情を知らずしかも具体策のない単なる観測気球であるという批判が起こった。 フランスのシラク大統領も英国に負けじと、IMFの改革の必要性を唱えたが、 これも具体案のない抽象論であった。 米国のクリントン大統領も通貨危機に対する米国のリーダーシップを総会演説において強調したが、 従来の主張の繰り返しで、 世界の関心を引くことなく終わったようである。


ブレトンウッズ体制の限界
そもそもブレトンウッズ体制が設立されたのは、 現在と事情の異なる加盟国がそれぞれ外貨不足と財政赤字に悩み、 またドルの不安定に悩まされていた時に発足した制度である。 したがって、 加盟国の外貨不足に対する健全な流動性確保については種々検討され、 また新しい制度も導入されてきた。 しかし、 ドル貨の過剰な流通とその短期資金の動きに対しては、 いまだ対策の検討が不十分なまま今日に至っていた。
もちろんこの間、 ラテンアメリカの債務問題やメキシコの通貨不安のような困難な事態が生じたが、 日本・米国を中心に加盟国の懸命の努力によって通貨制度が破綻に至るような混乱は起こらずに乗り越えられてきた。
しかし、 テレコミュニケーションの発達によって巨額の信用創造と移動が瞬時に可能となり、 そうした短期性資金に対する十分な対応が実現する前に、 メキシコ・タイその他の多くの途上国において、 短期資金の情け容赦ない大規模な移動が通貨と経済の大混乱を引き起こしたのである。
短期流動資金の移動に対して、 何らかのコントロールを考えるべきとする論も多い。 そうした対策は、 外資の導入国側でとるべきという考え方と、 外貨そのものの動きに税金等の負担と移動制限を課すべきとの考え方があるが、 いまだいずれかに統一されている訳ではない。
外貨受入国において過剰な外資流入に対して不胎化等の措置をとるというのは、 比較的受け入れ易い制度であり、 既にチリなどが実施した例もある。 しかし、 「このような制度は市場の自由を害し、 益より害が大きい」 という建前論には弱く、 資本移入の魅力も大きいため、 いまだ世界の大勢とはなっていない。


国際通貨体制の強化
また、 IMF・世銀の資本不足国に課する条件が厳しすぎるというような議論もあり、 かつてはSDRというようなIMF自体の通貨創出も考えられたが、 技術的な困難や分配の公正等の諸問題のために不成功裡に終わっている。
したがって、 現状で考えられる今回の通貨混乱のような事態への対応方法としては、 何らかの基準で過度と認められる短期資金の移動に対し、IMF等が警告なり制裁なりを行なうということと、 新しいNAB(the New Arrangements to Borrow 新規借入取り決め) の拡大などによって、IMF の使用可能な流動性を増大させようとする試みを更に推進することであろう。 もちろん、 債務者側に返済を厳格に行なわせることは必要であるが、 以上のようなものが、 米国の拠出嫌いを前にしての、 考えられる当面の対策ではないかという印象を受けた。
欧州通貨統一がどのような影響を国際通貨の安定性にもたらすかは、 今後を見るしかないが、 いずれにせよ通貨不安を増大する形での弱い不安定なユーロの出発は望ましくない。 欧州内の政策の統一が強く求められるところである。
ユーロが安定した通貨ということとなれば、 世界の通貨情勢も安定的となる。 それに対応して日本の円も国際通貨化を推進すれば、 より安定的な通貨体制も3極間で実現可能となろう。

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