1998年09月25日

高齢社会における住まい方に関する考察

土堤内 昭雄

川村 雅彦

白石 真澄

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1.
人々は各ライフステージの家族構成や経済状況に応じて、その時点で適切な住宅を選択している。ライフステージごとの住宅の住み替えパターンを「住宅すごろく」と呼ぶならば、これまでは「持家戸建て」が一般的な“あがり”であった。しかし、長寿化とともに高齢期の住宅選択は、世帯規模や心身機能また経済条件に応じて多様化している。これからの高齢社会においては、虚弱期や介護期も視野に入れた「加齢対応住宅」などを"あがり”とする新たな「住宅すごろく」が登場してきた。
2.
高齢期の経済設計は、若い世代ほど公的年金への依存が低くなるなど自助努力型が志向されており、人々の高齢期の就業意向も高く、職住近接で仕事をしたいと思っている人が多い。また、高齢期の居住用不動産の所有率や子どもへの相続意向は高く、住宅の所有は、高齢期を安心して暮らすために重要と考えられている。一方、少子化が進む中、自分たちのために所有する不動産を使いたいとする意識も見られ、今後は自助努力社会の中で公的年金を補完する経済基盤として居住用不動産の活用も考えられる。
3.
公的介護保険の導入など新たなシステムによる介護の社会化が志向されている。高齢期に望む介護対応には介護対象により違いがあるが、住宅介護が5~7割、施設介護が3~4割となっている。在宅介護の方法については、外部サービスの活用は住宅介護の6~7割を占め、外部サービスの供給体制の整備が重要である。また、在宅介護では家族の関与が重要であり、高齢期の住まい方と深くかかわっている。
4.
高齢期には多くの人が自宅のある住み慣れた地域で継続して居住したいとの意向を持っている。高齢期に望む世帯構成は夫婦のみが多く、子どもとは近居の意向が強い。これは高齢期に望む介護対応とも一致している。高齢健常期にはこれまでの「住宅すごろく」と同様に持家戸建が中心であるが、虚弱期には有料老人ホームや高齢者向けマンション、リタイアメント村などの加齢対応住宅を望む人が多くなっている。
5.
以上から、安心できる活き活き高齢社会を築くためには、(1)高齢期に住み続けるために地域のバリアフリー化や在宅介護に相応しい住宅の整備と、(2)高齢期の新たな選択肢として加齢対応住宅を整備し、(3)世帯構成などに相応しい住宅への住み替えを促進することが重要である。そして、(4)高齢者の意欲を引き出すようなワークスタイルに適した就業環境と住環境整備を行う必要がある。

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【高齢社会における住まい方に関する考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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