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- 金融ビッグ・バンの経済的側面
1.
橋本内閣から96年11月に提唱された金融ビッグ・バン(日本版ビッグ・バン)は、日本経済・金融の構造変化の中、不可避であったものであり、既に不可逆なものとなっている。
2.
特に東京市場の地位の相対的低下、個人金融資産1,200兆円の存在は金融ビッグ・バンを進める大きな要因となっている。
3.
メインバンクシステムなど借入中心の間接金融優位の金融システムは「貸し渋り」に見られるように、十分に機能しなくなってきている。直接金融でのファイナンスをスムーズに行わしめるためのシステム作りが必要である。
4.
金融ビッグ・バンの効果を部門別に分析すると、個人はその金融資産が保守的な年齢層に偏在しているものの、外貨預金や投信などへ一部シフトしよう。金融資産の多様化によって、財産所得の向上が見込まれ、これは家計消費にもプラスの影響がある。
5.
外為法改正によるネッティングや外貨建て決済の普及は事業法人に対する銀行のモニターを難しくし、崩壊しつつあるメインバンクシステムに打撃を与えよう。証券市場改革や資金供給チャネルとしての投信の改革などは事業法人の資金調達の多様化に寄与しよう。
6.
個人、企業の運用効率やコストが改善される分、金融機関は厳しい状況になるが、人的資源や店舗、情報の共有などによる範囲の経済性の発揮が重要であり、発揮し得ない場合は業務の絞り込みも必要となろう。
7.
機関投資家にとっては資産運用の効率化が見込める上に、本体、ないしは持ち株会社方式により他の金融業への参入の可能性が出てきた。また、カストディー(証券預かり)業務、PTS(私設取引システム)など新規業務も検討に値しよう。
8.
民間の変化に伴い、政府セクターも変わらざるを得ない。財投機関には民業を圧迫することなく、民業補完に徹することが望まれる。中央銀行である日銀も新日銀法により、法律上独立性が向上するが、このことは将来のインフレ圧力や長期金利上昇圧力を弱めよう。
9.
税制の未整備、依然不透明な退出ルール、金融サービス法制定などによる投資家保護の問題など残された課題は多い。
10.
金融ビッグ・バンが成功裏に終わった場合には国内の潜在的需要がファイナンスされる。反面、うまくいかない時には、国内の貯蓄超過が国内の潜在的資金需要に向かわずに海外に流出する可能性がある。
高橋 智彦
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