1997年02月01日

都道府県別要介護老人数の推計と介護実態

  岸田 宏司

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<要旨>

いったん要介護状態になると24時間365日休み無く介護を続けなければならない。しかし、介護を家庭だけでおこなうには現代の家庭状況から見て困難である。本レポートはこうした視点から、今後どの程度の介護負担が生じるのか、2010年を目標に都道府県別に要介護老人数の推計を試みるとともに現在介護がどのような実態であるかをインタビュー調査であきらかにした。

推計結果では要介護老人の半数は東京、大阪、愛知などの大都市圏に集中していることがわかった。要介護老人が2010年時点で10万人を超える都道府県は、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、北海道、埼玉県、兵庫県、千葉県、福岡県、静岡県の10都道府県となっている。全要介護老人数の半数(49.5%)がこの上位10都道府県で占められており、要介護老人問題は、規模という面では大都市圏の問題と言えよう。

都道府県別に算出した介護費用を合計すると2000年時点の総介護費用は8.1兆円となる。さらに2010年には11.5兆円に達する。都道府県別にみると東京都は2010年時点で9,500億円となり、最も介護費用が小さい鳥取県の672億円のおよそ14倍に相当する。

次に都道府県別に県民(20歳以上人口)一人当たりの介護費用を算出した(2010年時点)。全国平均では10,580円/月、中央値では福島県の11,038円/月となる。最も一人あたりの費用が高いのは島根県で14,207円/月となり、全国平均より4,000円程度高くなっている。最も安いのは埼玉県の6,355円で、島根県の半分以下の水準となる。

介護の実態調査結果では、現在の在宅介護はやはり家族の負担によって成り立っていることが明らかになった。とりわけ、そのほとんどは女性の肩にのしかかっている。家族の介護を経験した人達は、自分が介護状態になったときに在宅で療養を望んでいる。しかし実際に介護をした経験から、「この苦労を子どもや嫁に負わせるのは忍びない」という意見も多い。しかし、適切な外部サービスなどによって家族介護者の負担が軽くなるのであれば、やはり在宅で送りたいという本音もうかがえる。

介護は地域によってその様相がまったく異なる。介護負担が大きい地域に対しては、その地域の介護負担を全国レベルで支援することも当然必要である。また、介護のために次世代を担う人々の活力を奪うようなことがあってはならない。介護については、世代、地域などの側面も十分に考慮し、サービス供給も地域特性に応じた支援システムの構築がなされるべきである。

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