1996年08月01日

経済システムのデッサン(下)-その機能と再編

京都大学経営管理大学院 川北 英隆

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<要旨>

  1. 日本の社会・経済が本稿の分析対象である。社会・経済もシステムの一種であり、システムを構成している機能を分析することが、社会・経済を考えるうえで有効になる。
  2. システムが全く自由に働くことはありえない。まず、システムに対する外部からの制約を抽出しなければならない。また、システムには内部階層があり、それぞれの階層はその他の階層を制約する。
  3. 戦後、日本の社会・経済システムは「欧米の富」という目標によって統一されていた。行政が金融システムを経由して、具体的な目標を産業システムに伝達した。しかも、企業グループ問の競争があった。
    欧米の「富」を実現したことによって、社会・経済システムの統一性は喪失された。現在、抽象的な「富」だけが社会・経済の目標であり、「富」を生み出すための仕組みは「よけいなお世話」のようである。しかし、統一性のための仕組みがなければ、社会・経済システム全体として、「富」を効率的に達成することは困難である。
  4. 社会・経済システムの要素である国家と企業を分析すると、委託と受託の関係から成立している。また、委託者は受託者をモニターしている。委託と受託の関係を明確化し、事後的に評価できるための仕組みが必要になる。(以上、先月号)
  5. 金融仲介機能は変化している。証券化という、金融機能をサブ機能に分解し、再編成する動きが1つである。また、機関投資家の投資仲介機能と銀行などの金融仲介機能の接近が1つである。これらは委託と受託の関係を明確化する動きでもある。
    一方、決済機能については、金融仲介機能と峻別する必要性が高まっている。預金という金融商品の見直しでもある。
  6. 今後の社会・経済システムとしての統一性は、事後的な規制を主とするものである。委託者の自己責任原則であり、受託者に対するモニターであり、その委託と受託の正常な関係を社会的に補助する仕組みである。(以上、今月号)
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(1996年08月01日「調査月報」)

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