1996年08月01日

定期借家権創設に向けた新たな視点-超高齢社会への対応-

社会研究部 土地・住宅政策室長   篠原 二三夫

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<要旨>

  1. 日本の老年人口比率は2025年には25.8%に達するため、長寿化が進むにもかかわらず死亡率は上昇し、相続件数は徐々に増えるであろう。1993年の東京圏の土地所有状況をみると、約半数が相続・贈与による取得であり、高齢世帯による土地所有率は64%に達している。相続財産に占める土地の割合は高く、今後、高齢化が進行することによって相続が増えれば、節税対策などのために賃貸住宅経営などの土地利用ポテンシャルは一層高まることだろう。このような超高齢社会を迎えるにあたって、借地借家法のような供給抑制要因が存在することは好ましくない。
  2. 借地借家法改正を巡って、経済・社会学者、法学者グループなどが様々な議論を続けてきた。問題は弱者保護を背景とした正当事由制度の不合理な扱いと継続家賃の抑制が、良質な賃貸住宅供給を妨げてきたのかどうかである。そこで、東京都の市区部を対象とする賃貸住宅市場の実証モデルを構築し、改正の効果を具体的に把握するために、シミュレーション分析を行った。1979年時点で借地借家法が改正されたと仮定した場合、需給は徐々に変化し、93年時点では現行法を維持した場合(実績値)と比べて、家賃が低下すると共に供給(戸数、面積)は増加、戸当たり床面積は各市区で11~38%も増えるという結果が得られた。
  3. 定期借家権の創設などの改正を行うことによって土地利用の選択肢を拡大し、東京都立大学の島田教授が提唱する「流動期待型」から「定住期待型」の賃貸住宅経営を促進することが重要である。超高齢社会では老後生計を目的とした必ずしも裕福とは言えない高齢賃貸住宅経営者が増加するという観点からも、賃貸人は強者、賃借入は弱者という古い認識に偏った現行制度の改正が必要となる。借地借家法の改正と同時に、低成長下における賃貸住宅供給の支援や諸般の事情により住宅確保が困難な世帯に対する公共賃貸住宅政策の推進、上昇する土地利用圧力への計画的対応など、超高齢社会のまちづくりに向けて様々な政策を講じていく必要がある。

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社会研究部   土地・住宅政策室長

篠原 二三夫 (しのはら ふみお)

研究・専門分野
土地・住宅政策、都市・地域計画、不動産市場

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