1996年05月01日

不安要因残る回復、96年度は2%成長-1996年度改定経済見通し-

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<要旨>

日本経済は95年10-12月期から景気に改善傾向が見え始めたが、民間需要は弱く、景気の自律的回復には至っていない。96年度の景気は徐々に民需主体の回復に向かうと予想されるものの、不確定要因は多い。景気の回復傾向を持続的かつ着実なものとするには、規制緩和を軸とした構造改革と不良債権処理が不可欠であり、少なくとも96年度中は景気支持的な財政・金融政策が望まれる。以下は昨年12月20日に発表した「1996年度経済見通し」(以下、前回)をその後の状況を踏まえ、改定したものである。海外経済は前回をやや下方修正し、日本経済の実質成長率見通しは、95年度実績見込みを1.4%(前回:0.8%)、96年度見通しを2.0%(同:1.7%)と上方修正した。

I.海外環境~低迷期脱しつつある海外経済

1.米国経済は94年3.5%成長の後、減速傾向にある。94年2月以降の金融引き締め、景気の成熟化等を背景に、成長テンポは趨勢的に鈍化している。95年10-12月期、96年1-3月期は政府機関閉鎖や豪雪の影響などが加わり、低迷状況となった。足もと景気指標にはリバウンドを示すものが多いが、(1)家計部門の負債が高水準であり、消費の伸びを抑制、(2)パソコン関連需要のかげり等から設備投資の拡大ピッチは鈍化、(3)政府支出は削減傾向-などから、景気の基調は弱いと判断される。実質GDP成長率(前期比年率)は在庫調整終了等を背景に、96年上期1.1%が下期1.9%に高まるものの、潜在成長率(約2%台前半)を下回ろう。年ベースでは95年2.1%が96年1.6%(前回:87年基準の旧ベースで2.2%)となろう。物価は安定傾向を続けよう。最気、物価からみて96年夏頃までに累計0.5%程度の利下げがなされよう(公定歩合:現行5.0%)。
2.欧州では、ドイツは建設投資減少や在庫調整などから実質GDP成長率が95年10-12月期に前期比マイナスへと落ち込み、95年は2.1%(94年3.0%)に低下した。96年1-3月期も引き続きマイナス成長の見込みであり、足もとの景気低迷は著しい。今後に関しては、(1)減税等による個人消費の伸び、(2)マルク相場安定等を背景とした純輸出増加-などから、景気は年末にかけて徐々にやや上向こうが、力強さには欠け、96年の成長率は1.1%(前回:2.0%)にとどまろう。景気の弱さが続く中、物価は鎮静しており、年央頃までに追加利下げがあろう(公定歩合:現行3.0%→2.5%)。
イギリスの景気は消費の増加を背最に95年半ば頃を底としてやや回復傾向にあり、95年の実質GDP成長率は2.4%となった。今後、利下げ効果等を映じた資産効果や所得増から消費中心に拡大テンポが強まろう。96年の実質成長率は2.1%(前回:2.3%)と95年並みにとどまるが、四半期別には96年末にかけ3%程度に上昇しよう。消費者物価上昇率は96年央頃には下げ止まり、強含み傾向となろう。ベースレートは95年12月を含め3回、引き下げられたが、年央頃までに0.25%の追加利下げがあり、5.75%となろう。
3.東アジア(NIEs、ASEAN、中国)の実質成長率は依然、高水準であるものの、(1)主要輸出先である米国の景気減速や相互依存的な東アジア地域の成長鈍化、(2)中国の金融引き締めや台湾・韓国・香港での政治的不確実性の高まり-などにより、95年の8.3%(見込み)が96年は7.5%(前回:8.1%)に鈍化しよう。
4.円ドルレートは、95年4月に最高値(79.75円、4/19)をつけた後、(1)円高・ドル安是正に向けた各種の政策協調実施(協調介入他)、(2)日本の景気の弱さ・不良債権問題-などの中、円安・ドル高傾向となり、96年入り後は100円台半ばの推移となっている。円ドルレー卜は当面、横這い基調とみられるが、円安の地合を映じた日本の輸出持ち直し等による対外黒字の増加などから下期にはやや円高気味となろう。年度平均では、95年度96円に対して、96年度は103円(前回予測:98円)とみた。

II.日本経済~不安要因残る景気回復、96年度は2%成長

1.最気は急激な円高を主因に95年4月以降「中だるみ」状況にあったが、10-12月期からそれ以前の「緩やかな回復傾向」が再開している。景気改善の背景は、(1)円高・ドル安修正による外需のマイナス寄与頭打ち、(2)95年9月の経済対策(14兆円)、低金利政策(同9月以降、公定歩合0.5%)による公的固定資本形成と住宅投資拡大、(3)携帯電話、パソコンなど情報関連の投資や消費の増加、(4)住宅等の震災復興需要-である。95年度実質GDP成長率は3年連続のゼロ%台から1.4%(前回:0.8%)となろう。
2.96年度の景気は緩やかな回復傾向が続こう。主な背景は、(1)大幅なストック調整の終了、企業業績の回復傾向持続などから設備投資が弱いながらも増勢傾向、(2)為替の安定傾向等から外需のマイナス寄与が縮小方向、(3)民間消費も雇用情勢の厳しさからマインドは慎重なものの、所得増・物価安定の中、緩慢ながら増加-等である。上期は公的需要依存型であるが、下期は弱いながらも民間需要と外需の改善が景気を支える形となろう。(1)円レート103円、(2)公共投資下期追加(3.5兆円)、(3)公定歩合据え置き(0.5%)-を前提に、96年度の実質GDP成長率は2.0%(前回:1.7%)と予測される。前回見通しに比して、環境面では為替レートの円安、需要項目別の動きでは設備投資の堅調が成長率見通しを上方改定した主因である。なお、97年4月の消費税率2%引き上げ(3%→5%)を前提としており、今年度の消費等のカサ上げ要因となろう。
景気見通し上の懸念要因は多い。(1)追加補正がない場合の公共投資の下期息切れ、(2)設備投資に関する米国ハイテク景気減速などの影響、(3)不良債権問題、(4)円高リスク-などであり、政策動向を含め、要注視の状況が続こう。
3.物価面は、(1)為替が年度平均で96年度はやや円安、(2)景気の回復傾向が持続-から鎮静基調は変わらないが、卸売物価、消費者物価ともにわずかながら上昇に転じよう。景気の回復傾向とあわせ、日本経済のデフレ的な色彩は弱まろう。96年度は3年振りに名目GDP成長率が実質成長率を上回る状況に復しよう。
4.国際収支面では、趨勢的円高や海外現地生産増加等を背景に対外黒字の漸減傾向が続いてきた。経常黒字は94年度12.4兆円(名目GDP比2.6%、旧統計1243億ドル)が95年度9.7兆円(2.0%、1010億ドル)、96年度8.0兆円(1.6%、780億ドル)に縮小しよう。ただし、96年度内では円高修正や海外景気の下期改善等から徐々に黒字は増加しよう。
5.金利は景気回復力の弱さ、下振れリスクの残存、物価の鎮静、不良債権問題などの中、96年度も低金利政策が基本となろう。ただし、長短市場金利は弱々しいながらも景気回復が持続する中、強含み方向で推移しよう。

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