1996年03月01日

米国産業における情報関連投資の労働生産性への影響

熊坂 有三

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■見出し

はじめに
1.多要素生産性(MFP)分析:収穫一定のケース
2.C.E.S.生産関数によるK2-L代替効果の測定
3.結論

■introduction

1996年の新年が始まると同時に、AT&T社は全社員の13%にあたる4万人のレイオフを発表した。その日にAT&T社の株は2ドル63セント上昇し67ドル38セントになった。今の株式市場は企業のレイオフを“贅肉”カット、生産性の向上、競争力の強化と受けとる。AT&T社のこのレイオフの60%は管理職である。1990-91年のリセッションがホワイトカラーリセッションと言われたように、今やホワイトカラーのレイオフは珍しいことではない(真木、1994)。また景気拡大時のレイオフも珍しくはない。ほとんどの米国の大企業がリストラクチュアリングをおこなっている。AT&T社のレイオフにしても、3M社の5千人のレイオフ、IBM社の1,200人のレイオフ・・・・・に単に続いたにすぎない。シカゴにあるチャレンジャー・グレイ・クリスマス・コンサルタント社によれば、レイオフを発表した企業は93年に677社、94年に761社、95年に805社と景気回復にもかかわらず多くなり、レイオフの数もそれぞれ61万5千人、48万8千人、43万9千人と非常に多い。

多くのホワイトカラーを含むレイオフの急増の説明として情報処理関連化投資の拡大と国際競争力の激化がある(Caves Krepps、1993)AT&T社の会長のロバートアレンがレイオフの発表のさいに“我々の企業が競争力をつけるためには、レイオフが絶対的に必要だ”と言うように、労働生産性の向上がグローバルな市場において企業が生き抜いていくための鍵である(Investor's Business Daily)。

以下では情報処理関連投資に焦点をあて、米国の産業がコンピューターなどの投資による労働代替でどの程度労働生産性を向上させているかを測定する。まず最初のアプローチとして労働省の労働統計局(BLS)の行っている多要素生産性(MFP)分析を発展させ、資本を情報処理関連とその他の資本に分けて米国の28産業を分析する。この後で、情報処理関連投資が労働生産性の向上に大きな影響を及ぼしている製造業6種を選び、MFP分析における収穫一定の仮定をはずし、C.E.S.生産関数を推定し、具体的に情報処理関連ストックと労働の代替の弾力性を計測するとともにより現実的な仮定のもとで情報投資の労働生産性の影響を計測する。結果として、情報投資による労働生産性向上は幾つかの産業では年率0.5%を越えるため、企業の情報投資が今後もリストラクチュアリングの強いインセンティブになることが理解される。

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