1996年02月01日

景気は緩やかな回復傾向に復帰、1.7%成長へ-1996年度経済見通し-

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<要旨>

96年は米欧主要国の成長率がやや鈍化し、アジアも拡大テンポが若干低下しよう。こうした中、日本経済に回復傾向が定着するか、とりわけ96年度下期がカギを握ろう。

I.海外環境~海外景気はやや鈍化、追加利下げの公算高い米政経済

  1. 米国は93年3.1%、94年4.1%と潜在成長率(実質GDP成長率、2.5~2. 8%程度)を上回る拡大ペースを続けた後、95年に入ってからは四半期別成長率の振れは大きいが、趨勢的には2%程度に鈍化している。これは、(1)例年2月以降の予防的引き締め、(2)景気の成熟化、(3)家計部門の負債比率上昇-などを背景に、消費が減速傾向を強め、設備投資も情報化投資主体に好調なものの2ケタ増が1ケタ増に鈍化し、さらに在庫調整が95年春頃以降続いていることによる。成長ペースは96年上期も2%程度が続くが、下期は金利低下効果等からやや高まろう。95年の実質成長率は3.3%、96年は2.2%と鈍化しよう。インフレ率は96年も落ち着きを示そう。景気、物価等からみて、96年上期末頃までに1%程度の追加利下げがなされよう(公定歩合:現行5.25%)。財政赤字削減に向けた取り組みが順調に進めば、金利低下が促されよう。
  2. 欧州では、ドイツは94年に建設投資と輸出の増加などから実質GDP成長率は3.0%とプラスに転じた。95年入り後は、住宅建設にかかわる課税優遇措置終了(94年末)に伴う建設投資減速、マルク高等による輸出伸び鈍化、在庫調整局面入り-から景気は減速し、現在、低迷状況にある。95年の成長率は2.1%に下がろう。96年は在庫調整が成長率押し下げ要因ではあるが、(1)合理化目的中心に基調の強い設備投資、(2)マルク高の悪影響一巡等による輸出増加、(3)減税実施等による個人消費増勢-が予想され、95年並の2.0%成長となろう。景気は上期は低迷状態が続くが、下期にはやや改善しよう。こうした中、物価は落ち着いている。欧州の通貨情勢も不透明である。12月14日に利下げ(3.5%→3.0%)決定されたが、当面、一段の下げの可能性は残ろう。
    イギリスは米国の後を追う展開である。実質GDP成長率は94年3.9%と高成長となったが、94年9月以降の予防的引き締めの影響などから95年入り後は安定成長へと減速しており、95年は2.6%となろう。インフレ率は95年下期にピークアウ卜したとみられ、予防的引き締めは成功と判断される。96年上期も低成長が続くが、下期は、(1)減税等を背景とした消費の増加、(2)金利低下も加わっての固定資本形成の拡大-から成長率は高まろう。96年トータルとしては上期の低さから2.3%と95年から鈍化しよう。12月13日に1年10カ月振りの利下げ(ベースレート:6.75%→6.5%)がなされたが、さらに、0.25%程度の下げがあろう。
  3. 東アジア(NIEs、ASEAN、中国)は直接投資流入による投資拡大と域内貿易活発化の中、高成長を続けているが、96年は、(1)中国他での金融引き締め、(2)主要輪出先の米景気の拡大テンポ鈍化-を背景に、実質GDP成長率は8.1%(95年8.9%)に低下しよう。中国はソフトランディング過程にあり、韓国、台湾、シンガポールも堅調な推移と予想されるが、香港は景気腰折れの恐れもある。
  4. 円ドルレートは95年8月中旬頃から100円程度で推移している。当面、(1)国際協調体制、(2)ファンダメンタルズ面での円安要因(日本の景気・金融セクターの弱さ、対外黒字の縮小傾向等)一等により、95円~105円程度となろう。96年下期は、(1)日米両国の対外不均衡の規模は依然大きい、(2)日本の景気は緩やかな回復傾向に復し、金融機関決算から金融システム問題にも目処がつく-等から円高気味となろう。94年度99円、95年度95円が96年度98円となろう。欧州通貨統合問題など、海外からの相場変動リスクには注視を要しよう。

II.日本経済~最気は緩やかな回復傾向に復帰、96年度は1.7%成長へ
                  残る景気回復力の弱さと構造改革謀題、望まれる機動的政策対応

  1. 景気は93年10月を底に緩やかな回復傾向にあったが、95年4月頃以降、鉱工業生産が減少するなど、調整気味の状況にある。もともと回復カが基調的に弱かった中、(1)財政金融政策を背景に増加傾向にあった公共投資と住宅投資の息切れ、(2)急激な円高、米景気鈍化傾向等による純輸出の下押し、(3)阪神大震災、地下鉄サリン事件等の社会不安問題、雇用情勢の厳しさなどを背景とした消費低調-等の最終需要面での弱さに、(4)過剰在庫の調整圧力ーが加わった結果、足もとは「中だるみ」の局面にある。
    今後の景気は、(1)円高・ドル安修正、株価持ち直し、(2)経済対策(9月発表、14兆円)、利下げ(9月、1%→0.5%)、(3)リストラの部分的進展等による企業収益持ち直し、(4)情報通信関係分野での新規需要-等から、96年1-3月頃には「緩やかな回復傾向」に復帰しよう。
  2. 96年度の景気は、上期は経済対策による公共投資(95年度の追加補正の繰越分と96年度当初予)が景気を支え、下期は設備投資や消費へのバトン・タッチの形で回復が続こう。
    実質GDP成長率は95年度0.8%と見込まれる。96年度は、(1)名目公的固定資本形成は4%増(秋に3.5兆円追加補正)、(2)特別減税継続(2兆円)、(3)公定歩合据え置き、(4)円レート98円-を前提に1.7%となろう。なお、97年4月に消費税税率2%引き上げ(3%→5%)としており、一部、かけ込み需要が発生しよう。
  3. 景気の自律的回復に向けた環境は万全ではない。(1)バブル経済・バブル崩壊の後遺症は大きく、企業リストラは道半ば、(2)趨勢的円高・アジア諸国工業化等を背景とする純輸出縮小圧力と産業構造調整圧力が持続、(3)不良債権処理問題・金融機関リストラ上の課題も多い-などの構造的問題から、消費や設備投資の基調は弱く、外需にも期待できない。企業規模別には中小企業、業種別には非製造業がより厳しい状況にある。為替など不透明要因もあり、外部環境や政策いかんで、再度、停滞状況に入るリスクも残っている。
  4. 金利は景気の弱さ、物価鎮静、金融機関不良債権問題等の中、長短とも基本的には低位が続くが、方向性としては緩やかな景気回復への復帰等からやや強含みとなろう。

現在、緩やかな景気回復傾向に復する兆しが現れている。本格回復につなげるためには、構造改革、とりわけ金融部門の再生が急務である。また、回復力の弱い中、96年度には景気が再び停滞するリスクも払拭できない。引き続き、機動的な政策スタンスが望まれる。

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