1995年08月01日

日本型スーパーリージョナル創出への助走 -「金融サービス業化」に直面する地方銀行経営-

  山中 壽一

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<要旨>

  1. わが国での金融自由化の動きが本格化して10年が経ち、最後に残った業務分野(フィールド)についての規制緩和が進展する段階に入った。しかし、この一大変革期がバブル経済の拡張・崩壊期と重なったこともあり、わが国の金融機関の多くは未曾有の不良債権問題に直面している。全体では40兆円にも達するといわれる不良債権は、金融機関の経営破綻や赤字決算をもたらし、わが国金融システムの健全性、安定性そのものが問われる重大な局面を現出させている。
  2. 不良債権問題は、個人の金融資産選択行動での安全志向、貸出マーケットの低迷、金融機関の収益力の大幅低下をもたらし、金融市場の閉塞感を強める要因となっている。しかし、そうした環境にもかかわらず、地銀の一部には不良債権のマイナスの影響も軽微で、収益面を中心に良好な経営パフォーマンスを維持する銀行群が存在している。
  3. これらの地銀群の不良債権比率でとらえた経営パフォーマンスは大手の都市銀行と比べても優れ、地銀という業態でも最上位を占めている。それを支えている要因を分析すると、共通点として、本拠地での預金や貸出金の取引シェアが安定していることに加え、それらの銀行が極めて慎重な経営姿勢を堅持していることが鮮明となる。しかし、そうした経営姿勢が「金融サービス業化」を抑制し、構造変化への対応を遅らせる要因となっていることは否めない。
  4. 米国では、銀行の「金融サービス業化」に向けた経営努力が非金利収入の強化を可能とし、その収益構造の安定化をもたらしてきている。そうしたなか、大手銀行に限らず地銀でも全方位を志向した業務展開は見直され、それぞれが得意分野に注力する動きを強めている。
  5. 現在、わが国地銀も大きな構造変化に直面している。そうしたなかで、専門家育成、個人のメイン化対応、データベース・マーケティングの試行などの動きが顕在化し、これまでの経営姿勢の見渡しが真剣に検討されるようになっている。それは「金融サービス業化」が本番を迎えたことを示すものである。
  6. 今後、地銀の「金融サービス業化」に向けての努力は日本型スーパーリージョナルを創出する原動力となろう。今はそれに向けた「助走時期」である。出発点は、新しい時代に対応しどのような銀行になりたいかというグランド・デザインを自らが描く姿勢であり、得意分野を構築し、リスクに対峙(たいじ)する能力を高めることが求められよう。経営の透明性改善に向けての努力も不可欠である。
  7. 21世紀はすべての金融機関が個性化にまい進する時代であろう。それぞれの強みを結び合わせ、様々な形態の新しいコーポレート・アライアンスが模索されていこうが、これは同時に「強みを持たない金融機関は、衰退を余儀なくされる」という厳しい時代の到来を告げるものでもある。

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