1995年07月01日

ポスト巨大都市時代に向かう東京 -多元都市システム構築への試論 (その2) 東京一極集中構造の揺らぎと地域構造の多元化

長田 守

竹内 一雅

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本レポートは、都市開発部が93年度および94年度に実施したテーマ研究の成果に基づき取りまとめたものである。今月号は連載の2回目である。(なお、本文中の項目立ては前月号から続いている)。

<要旨>

  1. 東京の都市活動は、行政区域や地理的圏域をはるかに飛び越え脱地域化しているが、それと共に東京内部の地域構造も変化してきた。対外移出活動と内部サービス活動の集積が都市の土地利用や地域構造を決めているが、東京は対外移出活動の脱地域化によって、1970年代後半から80年代前半にかけて大都市型(メトロポリス)から巨大都市型(メガシティ)への変化があったと考えられる。
  2. 大都市とは、一般的に中心都市の人口規模が概ね100~200万人を越えると現れる都市圏構造で、大規模中心都市+周辺近郊都市(ベッドタウン)により形成される中心都市一極集中構造である。一方、巨大都市は世界的に見て概ね中心都市の人口規模が800万人を越える巨大都市圏で、大規模中心都市+副次中心都市+機能的に多様化した近郊都市から構成される一極+α極構造である。
  3. 東京の都市活動を支える多様な都市ネットワーク構造の変化を見ると、80年代後半以降顕著になるのだが、脱工業化や情報化の進展と共に、東京の巨大都市構造そして東京一極集中が支配的であった日本の都市ネットワーク構造そのものが変化する兆しが見られる。依然として多くの都市ネットワーク構造は東京一極集中を基本的特徴としているものの、東京圏外に新たなネットワーク拠点が誕生し、新たな構造を形成する兆しが見られるのである。
  4. 今までの日本の都市ネットワークを見ると、各都市はそれぞれが持つ地域中心性や拠点性の大きさによって大都市、中都市、小都市というように規模が決まり、東京を頂点とするピラミッド型都市階層構造、いわゆる東京一極集中構造を形成してきた。特に戦後から高度経済成長期にかけて、わが国ではこのピラミッド型都市階層構造が殆ど唯一、地域秩序の構成原理として機能してきた。
  5. 近年都市活動の脱地域化が多様な都市ネットワーク構造の萌芽をもたらし、一元的であった従来の東京一極集中構造をより多元的な構造へ変え始めているのである。この多元化の動きを正確に把握せず、新たな都市ネットワークの形成を、従来のピラミッド型都市階層構造を前提とした古い社会システムの枠に留めていては、東京は勿論のこと日本の都市ネットワークは全体として、機能的にも物理的にも脆弱性を増す怖れが大きい。
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(1995年07月01日「調査月報」)

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