1995年07月01日

土地を巡る状況の変化と土地保有税のあり方

  関谷 匡

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<要旨>

  1. バブル期を通じて一層上昇した地価に対し、地価の引き下げ、土地神話の打破、土地の資産としての有利性縮減、土地有効利用の推進などを目的に地価税が創設された。画定資産税についても、実効税率の低下や評価水準の地域格差拡大の是正などのため、課税標準額を公示価格の7割に引き上げ、土地保有税の負担が高まった。
  2. 最近の地価動向をみると、商業地を中心に大幅下落が続いており、長期的にみても名目GDPのトレンドを下回る水準にある。実勢価格は公示価格より低く、収益還元価格付近まで下がっているものと思われる。
    今後の土地需給関係は、(1)人口の減少や世帯構造の変化による住宅用地の需要減少、(2)経済成長率の低下による土地需要減少、(3)産業空洞化、農産物輸入自由化などによる土地の実質的輸入進行による需要減少や跡地利用による供給増加、などから長期的には緩和傾向に向かうとみられ、地価高騰の可能性は少なく、土地神話の復活、土地の資産としての有利性はなくなったとみられる。
  3. 保有税強化と地価の関係をみると、(1)地価税は商業地の極めて限定された法人への課税であり、固定資産税も住宅地の軽減措置拡大や12年間の負担調整がある、(2)地価税導入、固定資産税評価替決定前から事実上地価は下落を開始していた、などから、今回の地価下落に対する効果は小さかったものと思われる。
  4. 土地保有税の強化は、保有コストを上昇させ低未利用地の高度利用を促進すると言われているが、限定的な課税強化であったため、効果が期待されるのは一部の土地に限られる。実際には市場環境悪化から有効利用が進んで、おらず、保有税強化の土地有効利用推進効果はほとんどみられない。
  5. 土地保有税強化の理由として、資産税強化の一環であるという意見もみられる。資産税のあり方は所得税・消費税等とのバランスの中で議論するべきであり、仮に資産税を強化する場合でも、土地だけでなく金融資産等を含めた幅広い課税対象とし、公平な課税システムを構築すべきである。
  6. 土地保有税の実効税率が諸外国と比べ低く、税率アップにより海外との地価格差を縮小すべきであるとの主張もみられるが、地価水準は各国の歴史的地価形成の違い、土地利用計画のあり方、土地の生産性などからそれぞれ決定されるものである。ドイツのように非常に低い保有税率でも地価が安定している国もあり、実効税率の低さが海外と比べた高地価要因になっているかどうかは、慎重に検討されるべきである。
  7. 地価税については、(1)地価の高騰が解消し土地の有利性もなくなっていると考えられること、(2)課税の不公平性が強いこと、から廃止の方向で検設されるべきである。
  8. 同定資産税については、基本的には応益課税として住民サービスの対価としての適正な課税水準を設定すべきであり、平成6年の固定資産税評価はすでにバブル前の実効税率を上回っているとみられることから、現在の実効税率をこれ以上高める必要はないであろう。
  9. 地価が下落した現在、土地有効利用を推進するためには何が必要か、土地について公共の福祉と私権とのバランスをどこに置くかなどについて、幅広い議論が求められる。しかし、土地政策の基本は、税制によるのではなく、長期的視点に立った土地利用計画の作成とその実現に向けた施策を行っていくことであろう。

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