1995年01月01日

1995年度経済見通し -1.3%成長、望まれる回復定着と構造改革-

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<要旨>

米国はソフト・ランディングし、イギリスも成長鈍化しよう。ドイツ(旧西独)は回復が明確化、日本は回復定着を目指す段階-と跛行的である。こうした中、アジアの高成長は続こう。


I.海外経済~米英は成長鈍化、ドイツは回復明確化、アジアは高成長

  1. 米国は大幅金融緩和、企業のリストラ進展等を背景に91年3月に底入れした後、回復ピッチが強まり、92年下期頃からは潜在成長率(2.5%程度)を上回る状況が続いている。稼働率上昇・失業率低下など物価環境が悪化する中、FRBは94年2月から11月にかけて6次にわたる利上げを実施した(公定歩合3.0%→4.75%)。景気、インフレの状況からみて、95年上期中に1%程度の追加利上げがなされよう。95年の景気は、(1)雇用・所得増による消費堅調、(2)企業収益改善などを背景とした設備投資増加-等から拡大が続くものの、金利上昇の影響でペースは鈍化しよう。実質GDP成長率は94年の3.9%に対し、95年は前期比年率で上期2.5%、同下期2.0%とスローダウンし、通年では2.6%となろう。消費者物価上昇率(前期比年率)は95年上期がピークと予想される。景気・インフレからみて、95年下期には「ソフト・ランディング」とよベる状況になろう。政治、財政面での不安要因は残ろう。
  2. 欧州では、ドイツは93年1-3月期に底入れした。94年は輸出拡大に建設投資増加、在庫積み増し等が加わる形で実質GDP成長率2.2%(93年▲1.7%)とプラスに転じよう。95年は、(1)輸出の増加持続、(2)企業収益改善等による設備投資回復、(3)増税実施下ながらインフレ率鈍化と雇用情勢改善の中での消費堅調-から2.5%に上昇し、回復傾向が明確化してこよう。生計費上昇率は景気回復持続の中で、(1)企業の雇用増の動きを映じた単位労働コスト下げ止まり、(2)川上部門の価格上昇の波及-から95年下期に高まろう。景気は回復傾向にあり、インフレ率の上昇が予想される。96年賃上げの牽制を視野に入れ、95年下期に利上げとなろう(95年末、公定歩合5.0%:現状4.5%)。
    イギリスは92年春を底に拡大傾向が続いている。94年の実質GDP成長率は輸出の増加、投資の増加、在庫積み増し等から3.7%と88年以来の高さとなろう。95年も設備投資の増勢等から景気拡大が続くが、財政・金融引き締め策の中、消費がさらに鈍化し、実質成長率は2.9%となろう。景気拡大のテンポは潜在成長率(2%台前半)を上回り、インフレ圧力が高まっている。94年9月に利上げ(ベースレート:5.25%→55.75%)が実施されたが、英国史上異例の「予防的引き締め」として評価された。追加利上げがなされ、95年内に6.75%となろう。
  3. アジアは、貿易・投資の両面で域内の相互依存が深まる中、高成長が続いている。近年では特に、NIEsからASEAN・中国への直接投資が経済成長に大きな役割を果たしている。94年に続き95年も、NIEs、ASEAN、中国とも総じて高成長となろう。

II.日本経済~95年度は1.3%成長、望まれる構造改革の推進

  1. 91年5月に始まった景気後退は93年10月に終了した(経企庁)。景気が底入れし、面復傾向が続いている背景は、(1)拡張的な財政・金融政策(公共投資、減税、低金利)の効果、(2)民間部門でのストック調整進行(企業の設備・在庫、家計の耐久消費財)、(3)物価鎮静のプラス効果、(4)海外景気の改善-によるものである。94年度の実質GDP成長率は0.6%と93年度(ゼロ)から改善しよう。しかし、四半期ベースではプラス、マイナスの成長を繰り返し、一本調子の回復は困難であろう。物価鎮静も加わり、名目成長率では0.9%と93年度(0.8%、戦後最低)並みにとどまろう。
  2. 最気は「消費の拡大持続、設備投資のマイナスから微増への転換」を柱に回復傾向を維持する可能性が高い。ただし、(1)企業のリストラ行動の継続に伴う資産圧縮や人件費抑制圧力、(2)円高の景気下押し、(3)物価鎮静の企業収益圧迫庄退、(4)財政政策の発動余力低下一等から回復力は従来に比し弱い。また、円高、株安、米景気失速等のリスクも残っており、現在の景気回復の持続性には不透明さが残る。
  3. 95年度は、(1)減税規模5.5兆円(94年度5.8兆円)、(2)名目公共投資2.7%増(94年度1.4%増)、(3)公定歩合1.75%据え置き、(4)円レートは100円(94年度100円)-を前提としている。消費・設備投資を中心とした民間需要の伸び率が上昇するが、他方で公的需要が鈍化し、外需の成長寄与度もマイナスに止まる。実質GDP成長率は1.3%となろう。個別企業、産業別に明暗が分かれ、選別の時代の様相を強めよう。
  4. 経常黒字は93年度1305億ドル(名目GDP比3.0%)94年度1280億ドル(同2.7%)、95年度1240億ドル(同2.6%)とわずかながら縮小しよう。円高の数量調整効果、海外商品市況堅調による輸入価格上昇-が背景にある。円ドルレー卜は日米両国の高水準の対外不均衡が持続し、米国のインフレ懸念も続くことから95年央頃まで円高・ドル安圧力の強い展開となろう。下期も、対外不均衡の大きさ、米国政治等の不透明要因などから円高進展リスクは残るが、(1)米国のソフ卜・ランディングによるインフレ懸念後退、(2)日本対外黒字・米国対外赤字の緩やかな縮小-等から円高・ドル安圧力は一服しよう。年度平均で93年度108円が、94、95年度とも100円となろう。
  5. 景気回復力の弱さ、資金需要低迷等から公定歩合は据え置かれよう。長期金利は財政悪化等の中、ボラタイルな状況が続くが、趨勢は強含み横ばい圏とみられる。

日本の現状は「回復の曙光がみえ、定着を目指す」段階である。規制緩和の推進、内外価格差是正を基本政策に据えつつ、企業部門でのリストラ・体質強化を軸とした構造改革が課題であろう。改革の円滑推進のためにも、景気支持的なマクロ政策が望まれる。

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