1994年12月01日

国内レジャーの活性化に向けて-レジャー需要の潜在化と空洞化への対応-

  渡辺 誠

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<要旨>

  1. 過去の不況期には低下する傾向があったレジャー志向は、今回は景気低迷下でもほとんど低下しておらず、レジャー志向が本格的に人々の意識に定着してきでいる。しかしその一方でわが国のレジャー産業は伸び悩んでおり、レジャー関連指標もほとんどが低迷している。
  2. このギャップの大きな要因は、需要の潜在化と海外流失である。コストのみならず施設・環境面でわが国のレジャー産業は、変化しつつある人々のニーズを的確に汲み取っているとは言い難い、。若年層は海外旅行でそのニーズを埋め合わせているものの、ファミリー層や高齢者層では高い国内レジャースコストや施設面での片寄り、交通混雑などが要因となって需要の顕在化が防げられている。日本人が最も好む余暇活動である国内旅行について潜在需要を試算すると、現在の市場規模の4割以上に相当する5.3兆円にものぼる。
  3. また国内レジャー需要の海外流失で、レジャー産業でも空洞化が進みつつある。観光客の海外流失は、(1)最近の円高が国内レジャー費用の割高感をさらに強めている、(2)諸外国と比較した場合のわが国レジャー施設の見劣り、などによるものであり、当面は国際収支バランス改善に貢献していると言えるが、中長期的には今後の成長産業の芽をつんでいるという見方もできょう。
  4. わが国のレジャー環境を欧米と比較すると、(1)余暇時間が少ない、(2)訪れる場所や時期が集中している、(3)交通渋滞が慢性的である、(4)食事などの選択自由度が低いといった問題が指摘される。施設面では、わが国は特定のレジャー施設だけを対象とする短期滞在型の「点レジャー」が中心であるのに対し、欧米では地域全体が一種のレジャー施設化している「地域レジャー」も多く見られるといった相違点がある。
  5. 今後のレジャー環境を考えると、(1)時間的余裕度の高まり、(2)高齢者レジャーマーケットの拡大、(3)ゆとり志向の定着化などにより大きく変革していくことが予想され、わが国は「レジャー発展途上国」からの脱却をはかる好機を迎えていると言える。製造業の海外生産シフトが進む中で、他のサービス産業の充実とならんで、生産や雇用に占めるレジャー産業のウエイ卜拡大をはかることこそがわが国産業全体の空洞化を阻止する方策であると言えよう。
  6. 国内レジャー活性化のためには、最近の「安・近・短」トレンドから「安・頻・長」への移行が望まれる。そのためには(1)時短、休暇の連続化・分散化の推進、(2)レジャー価格の引き下げ、(3)施設面での工夫、(4)一層の官民協調による地域・施設の開拓などが必要である。特にゆとり志向、高齢者向け、長期滞在などの観点から「自然志向型施設」の重要性は増していくと思われ、わが国が全体として、これまでのハード中心のレジャー施設整備から脱皮し、各地域の特性を活かした自然・歴史・文化などを重視した多様なテーマを持ったテーマパーク化することが望まれる。

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