1994年07月01日

日本企業のエクイティファイナンス -ファイナンスはROEを引き上げたか-

  湯前 祥二
  海野 基

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<要旨>

  1. エクイティファイナンスは企業のバランスシー卜を大きく変えた。総資産に占める株主資本の割合はオイルショック以降上昇しはじめ、その上昇は更に、80年代後半のエクイティファイナンスのラッシュにより加速された。これは、株主資本の比率を高めることにより、以降の低成長経済において、金利変動のリスクを極力抑えられる財務構造を目指した結果と思われる。
  2. 日本企業の株主資本利益率(ROE)につき、分布状況を表すパーセンタイル値で見ると、80年代のROEが傾向的に低下していることが分かる。また、ROEが長期プイムレートを下回る企業の割合が、80年代を通して全体の約半分を占めている。
  3. 「資本金と資本準備金の合計の増加額」をエクイティファイナンスと見なして、76年度から92年度のデータを用いて分析すると、エクイティファイナンスとROEの上昇には長期的な関係が見られない。但し、業績不振企業の場合、エクイティファイナンスによってその期のROEが上昇するという関係が見られる。これは第三者割り当てなどの救済策の効果と思われる。一方、業績好調企業の場合、エクイティファイナンスによってROEが低下するという関係が見られる。
  4. エクイティファイナンス前後の財務指標の動きを見ると、ROEは、エクイティファイナンス時に一段上昇しその後もゆるやかに上昇する。すなわち、財務レパレッジの低下が続く。また、利払前事業利益率はエクイティファイナンス以降傾向的に低下する。これらの結果、ROEは低下が続くことになる。
  5. エクイティ債は、将来、株式の新規発行につながる可能性があり、潜在株式と呼ばれる。89年末からの株価下落に伴い、多くのエクイティ債は、依然、潜在株式のまま残っている。
  6. この潜在株式を考慮した上で、ROEを分析すると、多くの潜在株を残したままでいる企業の低収益性が浮かび上がる。また、こういった企業の株式は、表面上は割安に見えるが、投資家は潜在株式の効果を正しく認識した上で企業評価していたものと考えられる。
  7. 今後ファイナンスが再び活性化する前に、これに対する企業や投資家のあり方を冷静に議論していく必要があろう。資金が必ずしも有効に用いられなかった過去の経験から考えて、少なくとも、調達資金の使途や投資の効果についてより広範な開示を行なうことが必要だろう。

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