1994年07月01日

サービス貿易にみる日本産業の課題 -必要とされる情報・知識による質的転換

青山 正治

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<要旨>

  1. 92年の世界貿易(輸出額)は財(モノ)の貿易が約3.6兆ドル、サービス貿易(投資収益は除外)が約1兆ドルの規模であった。このサービス貿易額の規模は財の貿易額の28%に匹敵する。これは選商摩擦の議論を財の貿易収支だけで議論するのは不十分であるということを示している。さらに、世界的なサービス貿易の定義や議論、統計数値の護備も課題である。
  2. サービス貿易が注目されはじめている理由は(1)サービス貿易が財(モノ)の世界貿易額の約3割弱にも達する規模に成長していること、(2)サービス貿易で国際的に競争優位にたつ米国が70年代からその貿易ルール確立に向け傾注してきたこと、(3)その成果が先のウルグアイ・ラウンド合意により一定のルールが世界ベースで確立したこと、などがマクロ的な観点から指摘される。また、サービス貿易の内容を検討するとサービス産業の取引だけでなく、製造業の特許使用料や技術指導料といった国際的な企業の生産・事業展開に付随する内容が大きなウエイトを持ち、サービス貿易の問題は製造業および非製造業を問わない問題であることが理解される。
  3. 産業分析の観点から注目されるのは、「その他民間取引」の中に含まれている特許使用料の収支の赤字である。この分野を中心に分析を行っていくと、日本の産業・企業に対する先入観としてある「ハイテク日本」のイメージとは異なる姿が浮かび上がってくる。サービス貿易の地域別収支には日本の産業構造の反映や課題もおぼろげながら見て取れる。
  4. 日本の産業の問題として指摘されるのは、技術貿易における日本の比較劣位である。この点から指摘されることは、日本の産業・企業は本格的に基礎的な研究に注力し、独自の創造性を発揮すべき時期にきているという点である。さらに、需給状況によって低められがちなモノの生産に係わる膨大な情報・知識なども資産化を考えることが重要になっている。日本には情報・知識に関する資源や要件は社会の中に多様な形で集積されており、今後の課題はこれらを活性化し社会・産業・企業全体の創造性を高め、新たな情報・知識を活用する仕組み(システム)を再構築するための様々な工夫が必要とされる点である。
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