1994年05月01日

信用リスクと企業ファイナンス -格付けの視点からみた上場企業の資金調達の現状-

  野々山 尚子

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<要旨>

  1. 金融制度改革の動きとも相まって、国内社債市場の環境整備が急速に進んでいる。焦点はこれまでの発行市場を中心とした規制緩和等の動きから、今後、流通市場の整備へと移ろうとしている。
  2. 社債市場の発達は、金融取引に占める「市場取引」のウェイ卜を高め、市場メカニズムを発達させる。同時にスワップ市場の発達等とも結び付き、各種調達手段間の価格裁定を促す方向に作用しよう。その結果、最終的には借り手の信用力がファイナンス価格を決定する際の要素として、一層重要性を増していくことになると考える。
  3. 格付けの視点から現在の上場企業の外部調達状況(借入金および社債の残高)をみると、(1)残高の分布はAA格企業とA格企業および未格付企業に集中した構成となっており、(2)調達手段別では非製造業の社債調達比率が製造業に比べかなり低い水準にとどまっている。
  4. したがって、今後の市場変化要因として着目すべき点も、(1)社債発行により調達コストの有利性を享受できるA格以上の企業層の資金調達行動、(2)社債調達比率の低い非製造業の資金調達行動、および(3)未格付企業層の資金調達行動の変化にあると考えられる。
  5. 今回、一つの試みとして未格付企業を格付的な視点から分類してみたところ、未格付企業群の中にも投資適格企業に相当する財務内容を備えた企業が一定数存在するような結果となった。そこでこの判定結果をもとに既格付企業の外部調達と重ね合わせてみると、格付別の外部調達残高のカーブはAA格、A格、BBB格企業を中心とした山型のカーブに変化し、社債調達比率の傾斜も現在よりさらに格付けとリンクした格好となる。
  6. 上記の分析結果は判定式の精度等にも左右されるが、社債市場における無担保化の流れ、短中期債の解禁、その他残存する諸規制の緩和・撤廃の可能性等を考え合わせると、信用度からみた企業の分布状況の中に将来の市場構造を変化させる要因が内在化しているように思われる。一方、社債市場の発達は、企業の信用度を軸とした市場のセグメント化を促すと考えられることから、今後企業にとっても一層市場からの評価を重視した経営が求められてくることになると思われる。

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