1994年05月01日

日本流グリーンコンシューマーの育て方 - 情報感度による考察

栗林 敦子

小豆川 裕子

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<要旨>

現在、種々の社会問題の中で、「環境問題」への関心は「高齢化社会の到来」に次いで第二位に位置づけられている(首都圏の生活者2860人を対象に1993年に当研究所が実施した調査による)。そして、生活者の8割以上は、ゴミの分別、節電・節水、古紙リサイクルなど、資源やエネルギーの節約を配慮した生活を送っている。しかし、一方で、「環境のことを考えて買う」「エコマーク商品を買う」などの「物を買う」場面で明確に環境保全を意識したり実際に環境保護団体に参加している人(本稿では「グリーン・コンシューマー」と呼ぶ)は4割にも満たない。

このような意味でのグリーン・コンシューマーを増やすためには、第一に消費者の身近に納得できる価格で「環境を配慮した商品」が提供されていること、第二にそれらが本当に環境にやさしい商品であることが認知されていること、第三に人々が環境を配慮すべきであることを自覚することなどが基本であると考えられ、第一の「商品」の存在とともに、第二、第三に関わる「情報の提供」や「教育」が重要であるといえる。

そこで、「情報感度」に注目して、環境意識や環境保全行動の分析を行った。情報高感度層は新商品情報等に詳しく、消費をはじめとした新しいライフスタルの「牽引役」として注目すべき存在であり、今後環境に配慮した社会を築く上で重要な役割を担うのではないかと考えたからである。この分析の結果、情報高感度層は以下の特徴を持っていることがわかった。

  1. 「ゴミの分別」「節電」などの環境行動に関しては高い実行度を示すものの全体と比較して実行度は低く、また生活の利便性や快適性を抑制する行動に関しては実行度が低い。
  2. 環境行動のうち「詰替え可能容器入り商品の購入」「無農薬、無添加食品の購入」など購買・消費に関る行動に関して相対的に実行度が高い傾向にある。
  3. 環境に関する情報経路に関して、テレビ、新聞等は上位にあるが、全体と比較して雑誌や勤務先、企業の広報誌等からの情報入手が活発である一方、地域コミュニティからの入手は行っていない。

米国では、80年代後半に出現し始めたグリーン・コンシューマーの中核をなしていたのは、高学歴で高所得の層が多かった。このような属性から判断すると、購買力の旺盛な彼らは、当時の進歩的な消費者として、例えば、環境に関わる企業に対して監視の役割を担っていたといえる。そして現在、彼らの次に続くグループが徐々にグリーン・コンシューマーになりつつある。

わが国の場合、現在のところ情報高感度層は米国のグリーン・コンシューマーのようなレベルまで育っていないが、今後この層に焦点をあてた正しい情報提供の内容、方法を検討することが、生活者各層を環境保全型に変革していく上で、重要なステップになると思われる。

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