1993年11月01日

現代人の「貯蓄」意識とその行動

井上 一裕

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<要旨>

  1. 総務庁統計局の「貯蓄動向調査報告」によると、我が国の平成4年の全世帯の一世帯当たりの平均貯蓄現在高は1537万円で、前年に比較して4.9%の増加を示し、家計貯蓄率に関しても他の先進諸国を凌駕する水準を維持している。一方「国民生活に関する世論調査」によると、所得・収入、資産・貯蓄、耐久消費財、レジャー・余暇生活に対する満足度に関して、経済生活面の「資産」「貯蓄」に対する満足度が最も低いという状況が見られる。
  2. この満足度が低い「貯蓄」に関して、当社が行った調査によると、今日の貯蓄の三大目的は「病気や不慮の事故に備えるため」(71.1%)、「老後の生活費」(41.1%)並びに「子供の教育費}(35.3%)となっている。このうち、「老後の生活費」については、これを貯蓄目的として挙げる人の割合が、30歳代に入ると急上昇することが特徴的である。
  3. また、「将来に対し何らかの生活設計を持っているか」という質問に対しては、「持っている」と回答した人の割合が高く、7割を超えている。また、「持っていない」と回答した人の理由としては、「将来のことはわからないから」を挙げる割合が全体に高く、40歳代以降では「立てなくても何とかなるから」を理由として挙げる人も多かった。
  4. 注目すべきは、「高齢化社会を自分自身の問題として関心がある」と回答している20歳代の若者が5割を超えていることである。また、老後生活の不安な箇所についても、20歳~30歳代の若年層が「老後の生活費」を第1位に挙げており、若年層の老後準備に対する意識は予想以上に顕在化している。
  5. 人々が長期化する老後の経済生活の支えとして期待するものは、終身年金であることや途中断念することのない強制貯蓄性等の理由から、「公的年金」が断然第1位となっている。また、高齢層ほど「公的年金」に対するウエイトが高く、若年層ほど「預貯金」に対するウエイトが高まる傾向がある。なお、「公的年金」の将来性については、年金額が小さくなり、保検料が増えるだろうと回答した人が6割を超えている。
  6. 全体としては、人々は超高齢化社会を見通す中で、今の消費や自由時間を多少犠牲にしてでも、老後生活に備えたいとする堅実性の高い生活パターンに移行しつつある姿が窺える。しかし、人々の生活設計の現状をみると、正確な情報を欠く中で行われており、この点に関しては、国や民間の保険会社等情報発信側の今後の課題となるであろう。また、伺時に情報の受け手側にも生活設計に対する一歩進んだ意識改革が求められよう。
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