1993年05月01日

東京圏のオフィス市場の変容と今後のビル事業展開

  関谷 匡

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<要旨>

  1. 経済のソフト化・サービス化による産業構造の変化は、都市部にオフィス人口とオフィスビルの集積を促してきた。この都市のオフィス化を歴史的にみると、1983~1991年は戦後2度目の発展期にあたり、オフィス着工量が大幅に増加したが、景気後退に伴い、1992年以降、新たな調整局面に入ったとみられる。一方、第3次産業従業者数のシェアやオフィス人口率の増加率等からみると、わが国のオフィス化は成熟段階を迎えつつあることがわかる。このため、今後はオフィスの量的拡大だけでなく、需要者ニーズの高度化・多様化を背景にしたオフィス立地や形態、機能面などの質的変化に、より注目していく必要がある。
  2. 長期的なオフィス需要量を推計すると、わが国全体、東京都区部ともに、労働力人口の減少や一人当たり床面積の頭打ちから、需要は増加するものの、増加テンポは緩やかになる。しかし、21世紀には大量の建て替えが予想されることから、オフィス着工量はオフィス需要の増加率を上回って伸びるとみられる。
  3. 東京圏の賃貸ビル市場は、1980年代後半から続いた超貸手市場から、一転して借手市場に移行している。これは借手側の企業(需要者)からみると、空室増加と賃料低下により、企業ニーズに沿ったオフィス選択ができる環境が整ったことになる。このため、今後の最気回復局面では、オフィス拡張や機能再分散など、より積極的で多様なオフィス戦略をとる企業が増加していくであろう。
  4. 東京都区部についてオフィス需給バランスをみると、需要増を上回る供給が続くため、1995年時点でかなりの供給過剰が予想される。しかし、局辺部との地域間移動をどのように想定するかにより、都区部の空室率はかなり変わってくる。たとえば、都心部の高額の賃料が修正され、周辺部に対する優位性が再び高まれば、周辺部から都心部へのオフィス需要移動が活発化することも予想される。また、需要者ニーズの高度化・多様化により、空室の多くは立地条件やビルグレード、コストパフォーマンスなどの点で、競争力の弱いビルに偏在していくと考えられる。
  5. このような市場変化に対応すべく、ビル事業者は、オフィスを“商品”として明確に位置づけ、需要者のニーズに合った戦略を展開するなど、これまでの“箱づくり”から脱却し、ビルの管理運営も含め高度な専門性を備える必要がある。今後は、高度な戦略性を持ったビル企画がユーザーに評価されていくことから、事業毎の格差が拡大していくであろう。

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