1993年03月01日

地球環境問題からみた東京の都市活動

  川村 雅彦

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<要旨>

1.巨大都市の都市活動と地球環境問題

   今世紀末から21世紀にかけて、地球は巨大都市時代を迎える。国連の予測によれば、人口規模が800万人を越す巨大都市は1950年には2都市であったものが、1999年には28都市に達する。巨大都市の人口を支えていくために、生産・消費を通じて環境を破壊していかざるをえず、地球環境問題は巨大都市問題の側面をもつ。
巨大都市はそのネットワーク化により圏域内外の地域と結びつき、各都市が高度かつ複雑な機能分担を行っている。そこで巨大都市と地球環境問題を検討するには、単にその圏域だけではなく、物質収支の観点からも物質のインプットやアウトプットの相手先における影響も考慮せねばならない。


2.東京のエネルギー消費と地球環境問題

   東京都のエネルギー消費では、運輸部門や民生部門(業務、家庭)が着実に増加しているのに対して、産業部門(製造業)の消費量はこの20年間一貫して減少している。しかし、東京圏でみると、エネルギー多消費型の化学工業や鉄鋼業の立地する千葉県、神奈川県では製造業のエネルギー消費が極めて多い。
東京都で消費されるエネルギーは、全国の1割にも満たない。しかし、東京圏の製造業だけでも千葉県や神奈川県のエネルギー消費量は、東京都の全エネルギー消費量に匹敵する。さらに我が国全体からみても、東京圏外で生産された製品の多くが東京圏内で消費されている。そこで東京の都市活動は圏域内で直接消費されるエネルギーに、こうした圏域外で消費されるエネルギー(東京の都市活動を支える“シャドウ・エネルギー”)を加えた総和によって成立すると考えられる。従って、地球環境問題に貢献していくためには、圏域内の活動だけではなく、圏域外のエネルギーの消費構造まで視野にいれた取組が今後必要になろう。


3.東京の物流と地球環境問題

   経済のサービス化・ソフト化は物流を減らすものと考えられている。確かに東京都の東京圏における物流量の比率は年々減少している。しかし、全国レベルでは東京圏の物流はむしろ近年大きく伸びている。これは東京都から東京圏内の他県ヘ工場が移転し、東京都の物流量が相対的に減少する反面、周辺県の物流が大きく伸びているためである。すなわち東京都の工場の減少は工業の全国的分散ではなく、東京圏内の工業の拡大ないし郊外化を意味し、物流の郊外化をもたらした。
また、物流の軽量化とともに生産システムにおける多品種少量生産化、省在庫化の傾向は、物流の小口化、輸送ロットの減少として現れている。
このような東京の物流構造の変化は、二酸化炭素や窒素酸化物を排出する貨物自動車の走行距離と件数を増加させた。そのため、自動車の単体レベルの対策とともに、物流システムの合理化、モーダル・シフトなどの貨物自動車を中心とした総交通量削減策が必要である。


4.東京の木材消費と地球環境問題

   我が国の木材需要は1970年頃から急上昇するとともに、外材輸入も飛躍的に増えた。反面、国内自給率は現在3割を下回っている。特に熱帯林と関係の深い南洋材への外材依存度は全供給量のうち2割弱である。木材の主要用途である製材品、合板、製紙について、東京都での消費量を試算すると丸太換算で全国の2割程度となる。
東京の木材消費が熱帯林減少に対しどの程度の影響をもつのかという“シャドウ・エコロジー”の視点から推定すると、量的には必ずしも大きくはない。しかし、最近では木材供給国における伐採規制が強化されつつあるため、国内では木材や紙の再資源化や代替材利用の促進とともに、供給国の事情に対応した森林経営などに関する支援策が必要となろう。

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