1993年02月01日

93年度主要産業見通し

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<要旨>

  1. 【93年度の企業経営】企業収益が現在まで低迷している要因は固定費、その中でも経費等の「その他固定費」の増加によるところが大きい。そのため足元では企業は売上減による大幅減益に陥っているが、顕在化していないものの収益の回復カは着実に向上している。それは92年度以降企業の回定費圧縮が本格化しているためであり、売上増加による増益効果が高まっているからである。
    93年度の企業収益は売上の動向に大きく左右されるが、上場製造業の経常利益は増益率が2ケタに乗る可能性が高い。企業は増益に転じる中でも、当面は80年代後半の投融資活発化で生じた効率性・収益力の低下を見直す動きは今後も続くであろう。
  2. 【複合要因が錯綜する消費不況】個人消費は百貨店・スーパーの売上不振をはじめ、耐久消費財の販売不振など不振の度合いを強めている。この消費マインドの冷え込みの背景には可処分所得の低下と消費支出の伸び悩みがある。さらに今回の消費不況では、(1)バブル期のストック調整、(2)逆資産効果、(3)消費スタイルの変化、などの構造的要因も浮上している。93年度企業業績の緩やかな回復というプラス効果はあるが、複合要因の好転には時間を要し、個人消費回復の足取りは重くならざるを得ない。
  3. 【進まない不動産業の資産圧縮】不動産企業の業績低迷が続いている中、物件処分等による資産圧縮を打ち出している企業が多いが、バブル期に急拡大した不動産業の資産は現在も高水準で推移している。不動産業の借入金残高の伸び率は鈍化しているものの依然増加中である。不動産業の借入金依存度の高さから金利負担の度合いによって業績が大きく左右される体質になっているが、簡単な試算では現在の不動産業全体が経常黒字に転換するためには約17兆円(総資産の14%)程度の資産圧縮が必要である。
  4. 【ノンバンクの急成長と延滞債権】上記の不動産に関連してノンバンクの業績悪化が注目される。わが国のノンバンクは金融自由化による業務の多角化、資金調達手段の多様化、財テクブームなどを背景に70年代から80年代半ばにかけて金融機関系列を中心に設立が相次いだ。バブル期にはノンバンクによる不動産関連の事業融資が急増したが、不動産不況の深刻化から延滞債権が増加しており92年になって金融支援を受ける企業が続出している。こうした金融支援が本格的に実施されるのは93年度からであり、関連する金融機関や親会社であるメーカー等の収益を圧迫することになろう。
  5. 【各産業の動向】93年度の主要産業の収益動向(経常利益ベース)を展望すると、業種によって業績の明暗が大きく分かれると思われる。
    すなわち、製造業は利益水準自体は低いものの概して増収傾向が見込まれるのに対して、非製造業では一部を除いて概ね引続き低迷を余儀なくされるものと見られる。
    まず、「素材・エネルギー業穫」は92年度の大幅減益から企業業績は回復に向かおう。鉄鋼は在庫調整が終了して粗鋼生産が1億トンまで回復することから2ケタ増益に転じる。石油化学は下期以降に製品市況回復が見込まれ増益へ転じよう。
    「加工業種」では、これまで不振が続いていた電機・自動車の在庫調整・固定費圧縮が進んで増益となろう。受注残を抱える造船は増益を維持するものの、一般機械は設備投資減退が続く中、下期からの受注回復も期待できるが総じて減益基調が続く。自動車は年度半ばより国内販売が緩やかに回復に向かい2ケタ増益となり、半導体も急回復は望めないものの回復感が増してこよう。家電はやや厳しい状況が続こう。
    「非製造業」は92年度に見られた業種間の好不調をそのまま引き継ぐ形となろう。不況対策としての情報化投資の削減が続いている情報・通信はユーザーである他産業の回復待ちになると思われ、民間建設受注低迷の長期化で建設も減益が続こう。
    一方、時短等による余暇時間の一段の拡大を背景にレジャーは比較的堅調に推移しよう。トラックは郵便小包の値上げから宅配貨物のシフトによる需要増が見込まれ増益に向かうが、百貨店は消費回復が下期以降になると見込まれることから、収益回復は期待薄で引き続き減益基調となろう。
    総じてこれまでの景気後退から回復に至る局面とはやや異なり、業種間、企業間での格差が拡がろう。

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