1992年12月01日

最近の大手私鉄の経営動向

  渡辺 誠

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<要旨>

  1. 90年度のわが国私鉄の旅客輸送量は1,429億人キロと総輸送量の13.5%を占めており、うち大手14社のシェアが70%以上に達している。大手私鉄各社の売上規模は運輸他業種大手と比較すると小さいものの、様々なグループ企業を含めると大規模な経営組織を形成している。
  2. 関東・関西大手私鉄12社平均の鉄道事業の売上ウエイトは50%台で推移している。また、鉄道運賃は認可制となっているため、鉄道事業は飛躍的な伸びが期待できない構造となっている。しかも、運賃値上げ率は各社の業績に応じて決まるため、同距離乗車した場合でも各社間の運賃格差は大きく、現行の運賃制度が鉄道事業に対する企業努力を行うモチベーションを弱めているという指摘もある。ただ、中・長期的には周辺事業部門の強化により、鉄道事業の売上ウエイ卜は緩やかに低下すると思われる。
  3. 大手私鉄の不動産事業売上ウエイトは平均で2割程度だが、営業利益では5部以上を占めており、売上高営業利益率が不動産専業大手よりも高いなど、不動産事業の収益性は高い。高収益性の最大の要因は、売上原価率の低さにある。これは、私鉄各社が以前から広大な土地を保有しているため、土地取得価格が低いことに起因している。また、不動産分譲は企業収益の調整弁的な役割を果たしている面もあり、バブル期にも概して堅実な経営を行ったため、大きな恩恵も受けなかった反面、バブル崩壊の影響も格対的には小さい。
  4. 一方、パス事業中心の自動車部門は大半の企業で赤字となっている。低迷の原因としては、(1)輸送人員の減少、(2)人件費比率の高さ、(3)認可運賃制があげられる。省力化や効率化にも限界があるため、バス事業の利益面での向上を期待するのは今後も難しい。
  5. その他の事業の売上ウエイトは不動産事業とほぼ等しいが、利益面での寄与は極めて低い。今後は不動産分譲に過度に依存しない体質が求められ、これを担うのが不動産賃貸とその他の事業である。ただ景気低迷の現状では賃貸業も安定的とは言えず、数少ない好調業種であるレジャー部門にかかる期待が大きく、積極的な設備投資を計画している企業が多い。
  6. 各社の連結対象子会社の収益性はかなり低い。利益面の柱は連結決算でも単独と同様に不動産業であり、例えば流通業などの売上ウエイトは大きいものの、利益面での貢献度は低い。
  7. このように各社の利益は不動産事業に依存している部分が大きいが、基本的には鉄道事業の発展により沿線開発が進むため、不動産事業の収益性の高さは結局は鉄道事業の発展に依るところが大きい。将来的には実現可能性のある運賃自由化もにらんだ上で、現在の運賃認可基準を鉄道事業収支のみでなく、その他の事業を含めたものとするのも今後の検討課題の一つのように思われる。

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