- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 東京圏の住みよさに関する一考察
1992年10月01日
<要旨>
- 今や日本は1人当たり国民所得など数字の上では世界で有数の経済大国になった。私たちの生活も物質的には非常に豊かになったと言われている。しかし労働時間の長さ、高い物価水準、住宅・社会資本の立ち遅れ、生活環境の地域差等により経済全体の豊かさと、豊かさに対する個人の実感との間に乖離がみられることも指摘されており、個人生活は「生活小国」であるとも言われている。
- 本稿は既存の「都市の豊かさ・住みよさ」研究に着目し、一極集中のさまざまな弊害が生じていると言われる東京圏の評価を中心に整理し、東京圏の県別の「住みよさ」「住みにくさ」の分析を行うとともに、現在の都市評価の問題点についても触れた。
- 都市の豊かさや住みよさは個人的な主観によるところが大きいと考えられる。また個人の年齢や家族構成などの変化によっても影響を受けることが多く、十把ひとからげに「住みよさ」を論ずること、地域の個性を無視した同一の尺度で評価を行うことにはやや疑問点も残る。
- 東京圏の住みよさを評価した指標にはおおまかに5つのカテゴリーがある。具体的には「物的環境」「生活のゆとり」「余暇に関するもの」「安全性・快適性に関するもの」「その他」であり、関連する変数は多岐に渡っていること、各県別の評価は調査によってそれぞれ異なることが明らかになった。指標のもつ恣意性、一面性を考慮に入れ、今後さらに有効性のあるものとするために検討を行う必要があろう。
- 東京都は経済力に富み、就労機会の豊富さや生活の多様性を享受でき、かつ世界の大都市のなかでは稀にみる安全な都市であるが、住宅事情に関しては全国最低である。神奈川、埼玉、千葉の3県は都市基盤整備が人口急増に追いついていないこと、東京への就業地依存による弊害がもたらされていることが明らかになった。
- 東京圏から出ていくこと、もしくは東京圏に移り住んでくることによって人々はベネフィッ卜とコス卜の選択を迫られ、東京の多様な就業機会、情報量、経済力を享受することと、質の良い住宅に住み、豊かな自然のなかでゆとりある生活を営むことはトレード・オフの関係にある。今の日本の経済・社会のシステムを考えると人々が移動能力と機会を保障される自由度を果たして持ちうるのだろうか。東京集中を理にかなった現象と帰結するならば、人々が無理なく負担しうるコストの範囲内で、東京もしくは地方のどちらに居住するかを選択しうる状況に社会システムを変えていく必要がある。
このレポートの関連カテゴリ
白石 真澄
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号 -
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【東京圏の住みよさに関する一考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
東京圏の住みよさに関する一考察のレポート Topへ