1992年09月01日

経済の動き

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<米国経済>

92年4-6月期の実質GDP(速報値)は前期比年率1.4%となり、92年1-3月期の同2.9%に比べて伸び率は鈍化、景気回復カが依然として弱いことが明らかになった。設備投資、在庫投資がプラスに寄与したものの、個人消費が1-3月期の大幅増の反動から減少に転じたほか、純輸出がマイナスに寄与する等、積極的な景気牽引役がない状態が続いている。また、雇用、生産、マネーサプライ等の月次指標も足下の景気回復テンポが弱いことを裏付けており、6月の改定見通しよりやや弱い回復基調となっている。生産関係の指標では、6月の鉱工業生産は前月比▲0.3%と減少に転じており、稼働率も78.5%と依然として低水準で推移している。

家計部門の指標では、6月の実質消費支出は前月比0.4%と増加しているものの、名目所得は横這い、実質可処分所得は同▲0.2%と減少している。物価安定と金利低下は所得増加のプラス要因であるが、雇用環境が本格的に改善するまでは持続的な所得の増加は期待しにくい。

なお、足下の住宅関連指標は許可件数が4ヵ月連続で減少、着工件数の伸びも鈍化しているが、こうした港ち込みが今後も続くとは考えにくい。その理由は、(1)着工件数を人口の変動で除去した比率の推移を見ると、足下はようやくトレンドラインに戻った段階であり、引き続き増加が予想される、(2)モーゲージ金利が8%台前半まで低下しており、ローンの申込が再び増加している等、今後の住宅投資は弱いながらも増加基調を辿るものと予想される。

物価動向については、6月の消費者物価は総合で前月比0.3%(エネルギーと食料品を除くコア部分は同0.2%)と落ち着いた動きを示した。単位労働コストも92年1-3月期は前年同期比1.2%と低い伸び率に止まっており、当面、物価の安定基調は続くとみられる。

グリーンスパン連銀議長は7月21日の議会証言において、(1)家計と企業のパランスシートの改善が進行していること、(2)目標レンジを大幅に下回る水準で推移しているマネーサプライについては、最近、景気との連動性か若干薄れていること、(3)今後の景気動向については依然慎重な見方をしているものの、緩やかな回復を予想していることを明らかにした。なお、マネーサプライは依然として政策判断の有効な手段であることや、その定義を変更する考えがないことも言及している。

今後の金融政策としては、景気動向を見極めながらの慎重なスタンスが続くとみられる。但し、景気回復が再び頓挫する可能性が小さいことから、FRBは政策金利を現行水準横道いで維持する公算が高い。



<日本経済>

日本経済は、在庫調整の本格化、株価下落を背景に、景況感が一段と悪化している。現状、資本ストックの過剰感から、民間設備投資は大企業・製造業を中心として調整色が強まっておりまた、就業者数の伸び鈍化、株価下落の逆資産効果から、これまで堅調を維持してきた個人消費にも減速の懸念が生じている。一方、既に回復に転じていた住宅投資はこのところ増勢が一服しているものの、中小・非製造業の設備投資には底打ちの兆しがみられる。また、3月の緊急経済対策を背景に公共投資が増勢を強めている他、海外景気の回復から外需が拡大する等、最終需要の動向はまだら模様にある。

足もとの経済指標をみると、6月の鉱工業生産指数は、前月比2.1%のプラスとなり、製品在庫率指数も107.8(5月は110.3)とやや低下した。ただし、最近の生産指数の推移は一進一退、在庫率指数も依然高水準で、在庫調整はやや遅れ気味である。これらの背景には最終需要の伸び悩みがあるが、最大の需要項目である個人消費をみると、6月の大型小売店販売(店舗調整済)は前年同月比▲4.3%と大幅なマイナスを記録した。また、所得環境面でも所定外給与の減少(6月前年同月比▲11.6%減)や就業者数の伸び悩み(同0.6%増)がみられる。設備投資動向についても、先行指様である機械受注(船舶・電力を除く民需)は、5月前年同月比▲21.1%減、民間建設受注(大手50社)は、6月同▲25.1%減と、1-3月期に前倒し需要が発生した反動という面もあるが、4月以降二桁マイナスの低迷状態が続いており、基調は依然弱いと判断される。年初以来、早期に回復傾向にあった住宅投資については、6月の住宅着工戸数は年率換算で139万戸と、92年1月以降同140万戸前後の足踏み状態にある。金利低下、生産緑地法の影響から持家、貸家が増加基調にあるものの、高水準のマンション在庫を背景に分譲住宅が弱含み状態にあり、全体の足を引っ張っている。ただ、先行指標である住宅金融公庫融資受理戸数は増加基調を示し、今年度第一回次(4月22日~6月19日)では、前年比52.1%と大幅に増加、今後も、金利低下、地価下落、貸家採算の向上等がプラスに働き、貸家建設を中心とした緩やかな回復傾向が持続するとみられる。また、公共投資については、3月の緊急経済対策に盛り込まれた公共事業契約等の上期前倒し(75%以上)の進捗状況をみると、5月時点で国が42.8%(同様の政策がとられた87年度では38.7%)、地方が30.3%(同32.0%)と概ね順調に進んでいるとみられる。

最後に、国際収支の動きをみると、経常収支の黒字額はこのところ拡大基調にある。92年1-6月の経常黒字は、年率換算で1100億ドルを超えており、今年度は1000億ドルを超え、史上最高となる公算が高い。内需低迷による輸入の低い伸びに加え、円高傾向や、投資収益の構造的な黒字拡大が寄与しており対外摩擦が懸念される。



<ドイツ経済>

旧西独(以下、西独)では、91年春からの景気の調整局面が依然として続いている。92年4-6月期の鉱工業生産は前期比▲2.1%の落ち込みとなった。ただし、これには、暖冬等の特殊要因による1-3月期の高い伸び(同2.8%)の反動という面もあり、割り引いてみる必要があろう。物価面についてみると、消費者物価は5月以降鈍化傾向にあり、7月の前期比伸び率は0.2%(年率2.1%)と低い伸びにとどまった。なお、7月の前年同月比が3.3%と6月(4.3%)から大きく低下したのは、91年7月に実施された間接税増税の影響の一巡というテクニカル要因によるものである。国際収支については、世界景気の不振による輸出の伸び悩み等から、貿易収支、経常収支とも、改善傾向は一段落となっている。92年5月の貿易収支5億マルクの黒字、経常収支は▲41億マルクの赤字となり、92年1-3月期平均(各々、18億マルク、▲37億マルク)から悪化した。



<イギリス経済>

イギリスでは、90年半ば以降、景気後退局面が続いている。4月の総選挙後の消費者コンフィデンスの改善等から、景気は一時的に拡大したものの、その後は再び低迷している。CBIの6月の景気動向調査も、足もとの景況感が再び悪化していることを示している。一方、物価面については、6月の消費者物価上昇率は、前年同月比3.9%と、5月(4.3%)を下回り、落ち着いた推移が続いている。この背景としては、ポンド高や雇用調整の進展による、労働コスト圧力の緩和等があげられよう。国際収支面では、輸出を上回るテンポで輸入が拡大しており、貿易収支、経常収支ともに赤字が続いている。4-6月期平均の貿易収支は▲10億ポンド、経常収支は▲8億ポンドと前期からほぼ横這いとなった。

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