1992年08月01日

メガシティ東京の成長メカニズムと今後の展望

  田中 信也

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<要旨>

  1. 当研究所では、1990年度、首都圏における人口分布、都市機能および都市間連結構造に関するマクロ分析から首都圏全域の地域構造の変化を分析した。
    その結果、東京圏は約50km圏の範囲をもつ一体的な都市圏であり、巨大都市に特徴的な都市間の多様な機能分化と機能連担が進展し、その都市構造が1980年頃を境に1極集中型都市構造から(1極+α極)型都市構造に変化するとともに、中心都市、東京が国際的な都市ネットワークのなかに組み込まれていくことを把握した。我々はこれを『メガシティ仮説』として提示した。
  2. 1991年度は、『メガシティ仮説』の検証を試み、東京圏の都市構造の変化をよりミクロな視点から分析した。具体的には、東京圏の中から代表的な都市を選定し昼夜間人口比、産業特化傾向、パーソントリップ・パターン、各都市の事例分析等から構造変化の状況を詳細に分析した。
  3. その結果、東京圏の成長メカニズムは『メガシティ仮説』に概ね合致すると結論づけることができた。この成長のプロセスは、1960年代以降これまでのところ、産業構造の変化に沿うものであると理解することができる。したがって、東京圏内部の構造変化は経済効率の良い都市構造への変革プロセスであり、人口3,000万人の大都市圏を円滑に維持していくための必然的な流れであると考えられる。
  4. 東京圏内の各市町村の計画人口を合計すると、2000年には1都3県で人口が3,637万人、人口密度が2,695人/km2となり、東京圏はさらに高密度な都市圏へ変化していくと計画されている。このような高密化は都市間の連担と機能分化などを促し、さらに経済効率の良い都市構造への変化が進み易くなることを示唆している。つまり、1極集中型都市構造から(1極+α極)型都市構造へ変化する東京圏の成長メカニズムは、今後もその構造変化の基調であると考えられる。
  5. 横浜、千葉、立川、大宮、厚木、成田など副次中心都市の成長も、このような東京圏の成長メカニズムのなかで位置づけられるものであり、東京都心を頂点とする階層的(あるいは一部重層的)なネットワーク構造のなかで認識されるものである。したがって、今後、東京都心とのつながり(交透アクセスや運輸通信基盤等)をより強化していくことが、副次中心都市の成長をさらに促すことになる。
  6. 本年6月、国会等の首都機能移転に関する最終のとりまとめが行われた。それによると、東京圏から移転する人口は約30万人と示されている。この規模は東京圏の人口約3,000万人の1%程度、1986年と87年の2年間の東京圏への転入超過数とほぼ同程度であり、規模の面だけを見ると国会等の首都機能の移転は東京圏の都市構造に対してそれ程の影響は及ぼさないと思われ。しかし、都市機能の面から見ると、それは少なくとも一時的に東京都心の中枢管理機能や国際機能を低下させることになり、これまでの東京圏の成長メカニズムを転換させるだけのインパク卜をもつ可能性がある。経済活動と政治や行政の結びつきが強い現在の社会経済システムが継続する限り、このようなインパクトは非効率な都市構造への転換を促すことになり、不必要に社会的費用を増大させることになりかねない。したがって、国会等の首都機能の移転を有効に作用させるためには、政治や行政が不必要に経済活動を制約しないための仕組みづくり、つまり、中央省庁の許認可権限の分権化などの既存の社会経済システムの見直しを同時に進めることが必要である。

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