1992年07月01日

1992年度改定及び1993年度経済見通し

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<要旨>

昨年12月2日に「92年度経済見通し」を策定したが、今般その後の状況を踏まえ、92年度改定と93年度予測を行った。内外経済の基本的見方に変更はない。実質成長率の見通しは米国は前回と同一、ドイツと英国は小幅の下方改定である。92年度の日本経済は内需を下方修正したが、外需を上方修正しており、実質GNP成長率としては前回見通しと同じ3.0%である。


I.海外経済

  1. 原油価格はリビアの関連制裁問題、CISの輸出動向が引き続き不透明な中、世界景気の回復傾向が明確化し、OPECの稼働率も高水準を続けるとみられることから強含みとなろう。日本の通関入着価格(ドル/バレル)で、91年度18.8ドル(実績)が92年度19.0ドル、93年度20.3ドルと見込んだ。
  2. 米国経済は91年4-8月頃にかけて拡大の兆しを見せたものの、湾岸戦争終結に伴う一時的な現象であった。その後追加された大幅利下げの効果等もあり、景気は92年1月に底入れしたとみられる。実質成長率は91年のマイナス(実績▲0.7%)から、92年は住宅投資の高水準の伸びと消費の回復により1.9%のプラスに転換し、93年は設備投資の拡大等も加わり、2.8%に高まろう。今後、「バランスシー卜再構築が進む中、緩やかな回復」が続こう。なお、93年の成長率は潜在成長率(2.5%程度)をわずかに上回るが、実質長期金利の高止まり、負債比率の水準自体の高さ等の構造的要因から、従来の回復期に比べ力強さに欠けよう。
  3. 欧州では、ドイツ(旧西独)は91年春頃から景気減速が続いてきた。しかし、92年下期には特別所得税(1年間)の終了等により、景気は回復に向かい、93年も緩やかな拡大が続こう。実質成長率は91年の3.2%(実績)に対して92年1.5%、93年2.4%と予測される。

    次に、英国経済では、景気後退は既に戦後最長となっているが、累積的利下げの効果、総選挙での保守党勝利に伴う消費者心理改善等から、景気は92年春に回復に転じ、93年も回復基調が続こう。実質成長率は91年のマイナス(実績▲2.2%)が92年は0.9%のプラスに転換し、93年は2.5%となろう。

II.日本経済

  1. 景気は91年1-3月期に「山」を付けたとみられる。現在、景気の調整局面が続いているが、(1)金利低下効果等による住宅、非製造業設備投資の回復の兆し、(2)緊急経済対策(92年3月末)の下支え効果、(3)海外景気の回復傾向に基づく輪出環境改善、(4)在庫調整進展による減産圧力緩和―から、景気は「92年7-9月期頃には底入れし、下期は回復に向かい、93年度も回復が続く」と予測される。実質成長率は「91年度の3.4%(実績見込み)から92年度は3.0%に低下し、93年度は3.7%に高まる」とみられる。
    景気後退の「長期化、深刻化」はないと判断したのは以下の点による。
    (1)バブル経済崩壊の影響は限定的
      逆資産効果等の実体経済への直接的影響に関しては、株価下落の反面、金利も大幅に低下しており、総合効果をみるのが妥当。試算によればネッ卜の影響は91年度がマイナスのピークで93年度はほぼゼロに軽減(今後の株価18000円程度、公定歩合3.75%の下での基礎研短期マクロモデルによる試算)。また、金融機関貸出行動を通じた間接的影響に関しては、18000円程度の株価であれば、当面の金融機関の貸出が著しく抑制されることはない。
    (2)雇用調整への波及の可能性は小
      長期的な労働力不足傾向等から、全般的な雇用調整に至る可能性は小さい。
    (3)設備投資ストックの調整は軽度
      企業の期待成長率は下方屈折していない、労働代替投資のニーズは高い―等から軽い調整で終わろう。
    (4)在庫調整進展で生産は下期に回復へ
  2. 経常収支黒字は海外景気回復等による輸出の2ケタの伸びと内需低調による輸入の低い伸び等から、92年度は1100億ドルと過去最高に拡大しよう(過去ピークは86年度941億ドル。91年度は901億ドル)。93年度は円高、内需回復から経常黒字は頭打ちとなるが、引き続き1000億ドルを上回ろう。名目GNP比は91年度2.6%、92年度3.0%、93年度2.6%と高めで推移しよう(過去ピークは86年度4.4%、直近ボトムは90年度1.1%)。
  3. 円ドルレートは、当上期は米国景気回復の着実化、日本の景気後退局面の持続等から130円近辺で推移するが、下期、来年度については日本の景気回復、高水準の対外黒字等を背景に円高方向が予想される。92年度平均は129円、93年度は121円を見込んだ。公定歩合は、水準の低さ、景気の底入れ方向、財政面での追加補正からみて、現行3.75%で92、93年度とも横這いとみた。

政策的には、今後の日本の景気回復を着実化するため、公共投資の追加補正が望まれる。景気の回復が、バブル清算・不良債権問題克服の基礎条件であろう。また、現在、日本の各種システムの見直しが迫られている。従来以上に中長期的ビジョンの確立と政治面でのリーダーシップの発揮が求められているといえよう。

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【1992年度改定及び1993年度経済見通し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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