1992年06月01日

経済の動き

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<米国経済>

92年1-3月期の実質GDP(速報値)は前期比年率2.0%となり、前期の同0.4%から緩やかな景気の回復を示した。これは在庫投資が再び大幅なマイナスとなったものの、個人消費が同5.3%、住宅投資が同15.8%と大幅に伸びたためである。今後も過去の景気回復局面と比べ回復カは弱いものの持続的な回復基調か続くと予想される。生産関係の指標では、3月の鉱工業生産は前月比0.2%と2ヵ月連続で増加した。但し、稼働率は78.1%と昨年8月以降、一貫して80%を下回る低い水準で推移している。

家計部門の指標では、3月の実質消費支出は前月比▲0.2%と減少に転じた。但し、実質可処分所得は同0.6%増と2ヵ月連続で高い伸びを示しており、4月の消費者コンフィデンス(コンファレンスボード)も64.8%と3月の56.5%から上昇していることから、消費支出は今後緩やかながら増加するものと見込まれる。

住宅関連では、3月の着工件数か前月比6.4%増と2月に続き大幅増となった。こうした住宅投資の増加は、91年下期における長期(モーゲージ)金利の低下がようやく影響し始めていることを裏付けている。また、住宅価格は90年からの景気後退期にかなり低下しており、物価上昇率の低下を考慮した相対価格面からも今後の住宅投資の増加が見込まれる。

物価動向については、3月の消費者物価が総合で前月比0.5%、エネルギーと食料品を除くコア部分でみても同0.5%となった。しかし、3月の消費者物価については食料品の一部価格の急上昇、春・夏物衣料品の値上げ、航空運賃の値上げ等、一時的要因が大きく反映されていると考えられる。物価を取り巻く経済環境(賃金、単位労働コスト、設備稼働率等)に大きな変化がみられないことから、当面、物価の安定基調は続くと予想される。

また、2月の貿易収支は▲33.8億ドルと1月の▲59.5億ドルから赤字幅は大幅に縮小し、83年3月以来の低い水準となった。航空機の輸出増等、一時的要因が含まれているものの、輸入が2ヵ月連続で前月比で縮小しており、輸出入ともに貿易赤字減に寄与した。但し、今後は景気回復に伴う輸入増に加え、海外景気の低迷や足下のドル高がラグを伴って輸出に影響を与える懸念もあるため、現在のベースで貿易収支が改善するとは予想しにくい。

金融関連では、FRBは4月9日にFFレートを0.25%引き下げて3.75%とした。公定歩合も3.5%と64年以来の低水準にあり、現在の景気が弱いながらも回復に向かっていることを考慮すると、さらなる金利引き下げは予想しにくい。当面の金融政策は、これまでの金融緩和による景気刺激効果を見極める観点から、現状維持のスタンスを堅持すると予想される。但し、足下のマネーサプライM2はFRBのターゲットレンジの下限近辺で推移しており、マネーサプライの伸び率が弱含みで推移する場合は、FFレートをさらに0.25%引き下げる可能性も残ろう。



<日本経済>

○景気は、足元、調整局面が持続、回復は92年度下期

日本経済は、生産調整の本格化、設備投資の停滞等から、調整局面が続いている。91年10-12月期の実質GNPは前期比年率▲0.2%のマイナスであった。民間住宅、民間設備がともにマイナスとなる一方で、最大の需要項目である民間消費についても前期比年率0.4%とほぼ横這いにとどまっている。また、92年1-3月期の鉱工業生産指数は前期比▲3.2%減の大幅なマイナスであり、資本財等を中心として本格的な在庫調整局面にある。当面、生産関連指標を中心に弱い数値が持続しようが、景気がさらに悪化し、雇用調整に至る可能性は低い。今後、金利の累積的な低下の効果や、公共投資の前倒し実行等から、住宅投資や中小・非製造業の設備投資を中心に、景気は次第に底入れに向かうとみられる。

足元の月次指標をみても、金利感応度の高い住宅・設備関連で回復の兆しが見え始めた。1-3月期の住宅着工戸数は年率で138万戸と、前期比7.5%増加した。3月には住宅ローン金利の引き下げもあり、今後とも住宅着工は堅調に推移するとみられる。設備投資関連指標をみても、機械受注(船舶・電力を除く民需)が1-2月に前期比7.5%増、民間建設受注も1-3月期に前期比41.2%増となっている。海外経済にも回復の兆しが見え始めており、足元、国内需要の低迷、在庫積み上がりによる生産調整圧力を一部相殺しよう。また、物価も次第に安定基調をとり戻していることから、昨年10-12月期と生鮮食品の値上がり等を背景として一時的に低迷していた消費マインドにも回復の兆しがみられる。堅調な雇用・安定した物価を背景として民間消費は堅調に推移しており、今後金利の景気拡大効果が次第に浸透するに従い、景気は底入れに向かうとみられる。



<イギリス経済>

イギリスでは、景気は依然、低迷基調が続いている。昨年1O-12月期の実質GDPは、前期比▲0.1%のマイナス成長となった。これにより、90年半ばから始まった今回の景気後退期間は過去50年間で最長のものとなっている。生産、消費関連の経済指標、3月のCBI(英産業連盟)景気動向調査等から足もとの状況をみても、依然、景気は低迷基調が続いているとみられる。

物価面では、3月の消費者物価上昇率は、前年間月比で4.0%と、引き続き落ち着いた推移となっている。これは、景気減速に伴う雇用調整の進展により、労働コスト面からの物価上昇圧力が緩和していることが背景である。一方、年初からの商品価格の上昇、ポンド安等が総入物価を通して、国内物価の上昇圧力となっている模様である。

国際収支については、91年半ば以降、海外景気の悪化による輸出の減少等から、貿易収支、経常収支ともに再び赤字が拡大する傾向にある。3月の貿易収支は9億ポンド、経常収支は6億ポンドのそれぞれ赤字となった。



<ドイツ経済>

旧西独(以下、西独)では、景気の調整局面が続いている。92年1-3月期の鉱工業生産は前期比2.5%増と91年1O-12月期の同▲1.2%から回復した。しかし、これは、暖冬の影響によるところが大きいと言われており、本格的な景気回復に転じたとは判断するのはやや時期尚早であろう。

4月の消費者物価は、前年同月比4.5%と、3月(4.7%)を下回ったものの、依然、連銀が「容認しがたい」としている4%台の水準にとどまっている。今後の物価動向をみる上で、92年度の賃上げ率が鍵となるが、ドイツ最大の労組であるIGメタル(金属労組、総合員数400万人)の賃金交渉は現在、進展中である。また、第2の労組、公務員労組(組合員数230万人)の賃上げ妥結率は、5.4%と、昨年(6.0%)を下回った。ただ、昨年7月の間接税増税による物価押し上げの一巡から、物価上昇率は前年比でみた場合、今年7月に見掛け上、大きく低下する見込みである。

国際収支については、92年年初より貿易収支の改善テンポは鈍化している。これは、暖冬の影響により、今年1-3月期の生産がやや増加したことを反映して、輸入が増加していることが背景にある。

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