1992年04月01日

経済の動き

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<米国経済>

91年10-12月期の実質GDP(改定値)は前期比年率0.8%のプラス成長と、7-9月期の1.8%に比べ伸び率は大幅に鈍化した。純輸出、住宅投資、在庫投資がプラス成長に寄与したが、「意図せざる在庫」の増加や消費支出が3四半期ぷりのマイナスに転じたことを勘案すると、景気実体は依然として底這い状況にあると判断される。

2月の非農業部門雇用者数は前月比16万4千人増加となり、市場の事前予想を大きく上回った。今回の雇用増の主因は小売業(13万3千人増)にあるが、これは季節調整による影響もあり基調としての増加を判断することは早計である。また、1月の減少幅は当初の9万人減から14万人減に下方修正されている。

生産関係の指標をみると、1月の鉱工業生産は前月比企0.9%と3ヵ月連続の減少、設備稼働率も78.0%と、昨年7月の80%から一貫して低下している。

家計部門の指標では、1月の実質消費支出は前月比0.2%増となったものの、主に賃金所得の減少から実質可処分所得は同▲O.2%となっている。2月の消費者コンフィデンス(コンファレンスボード)は46.3%と低下したが、ミシガン大のセンチメント指数は68.8%に若干上昇している。低い貯蓄率や依然として高い債務残高を考慮すると、今後の景気回復のなかでも消費が牽引役になる可能性はかなり低いと思われる。

一方、住宅については、1月の着工件数が前月比5.5%増(年率換算着工件数116万7千件)と大幅増を示した。今回の住宅着工件数の伸びは、他の指標同様、過去の景気回復期に比べれば弱いものであるが、輸出の堅調と並んで当面の景気回復力の中心となることが予想される。

物価動向については、1月の消費者物価が総合で前月比0.1%、エネルギーと食料品を除くコア部分が同0.3%と落ち着いた動きを示している。景気が底這い状況にある中、原油価格は低位安定の推移となっており、当面の物価上昇懸念は小さいと予想される。

金融関連では、過去に遡って改定されたマネーサプライ統計が2月20日に発表された。M2は概ね上方修正されたが、91年第4四半期のM2の伸びが低迷していたことには変わりがなく、足下では対前年第4四半期で5%強の水準で推移している。また、グリーンスパン連銀議長は2月以降の議会証言の中で、「景気回復力は依然として弱いものの、明るい兆しがみられる」と、それ以前と比べると若干楽観的な見方をしている。

以上の点から、当面の金融政策については、(1)これまでの金融緩和の効果が現れて景気が緩やかな回復基調に向かえば現状維持、(2)2月の雇用増加が一時的なものとなり、雇用環境や消費者マインド等が予想以下の水準で推移する場合は、FFレートの小幅引き下げ―が予想されよう。



<日本経済>

○景気は当部調整局面が持続、回復は92年度下期

日本経済は足下減速感がさらに強まりつつある。1月の鉱工業生産は前年同月比▲4.0%とマイナス幅が次第に拡大している。一方で製品在庫指数は上昇傾向にあり、昨年秋頃からの在庫調整はここにきて遅れ気味に推移している。また、92年2月から3月にかけて発表された各機関の92年度設備投資計画結果をみても、マイナスとの計画が相次いでおり、当初計画としてはほぼ10年振りに悪い内容となっている。こうした動きを背景として、景気の先行きに対して悲観的な見方が台頭している。

ただ、民間消費・住宅投資等、家計部門の堅調、公共投資の拡大に加えて、海外経済も回復基調にあるなかで、景気底割れの可能性は低い。

1月の住宅着工は、季調済年率で約138万戸と前月に比べて6.0%増加した。1月から2月にかけて、長期金利は0.9%低下しており、今後次第に住宅投資の回復基調が鮮明になろう。

民間消費も底堅い。その最大の要因は雇用の堅調さであり、時短や長期的労働力不足が企業の雇用意欲を支えている。法人需要の剥落や、一部バブル関連消費は低迷しているものの、サービス、旅行関連を中心として消費の基調は堅調である。昨年10-12月期には、生鮮食品の大幅値上がりといった特殊要因もあり、消費は一時的に低迷していたが、今後は次第に回復していこう。1月のCPIが前年比で1.8%の上昇と、前月の同2.7%の上昇から▲0.9%も上昇幅が低下していることも、民間消費の回復に好影響をもたらそう。

景気の先行きに対して最大の懸念材料である設備投資についても、年度前半にかけては調整局面が続こうが、後半には金利低下による調達コストの低下、最終需要の回復基調の中で、次第に堅調さを取り戻してこよう。

外部環境についても、日本の輸出の約3割を占める米経済に回復の兆しが見え始めており、企業家心理に好影響を与えよう。当面日本経済は、在庫調整・設備ストック調整の本格化のなかで、低迷状態が持続しょうが、秋頃にかけて景気は底を打ち、年度後半には再び上昇局面を迎えるものとみられる。



<イギリス経済>

イギリスの91年10-12月期の実質GDP(速報値)は前期比▲0.3%のマイナス成長となった。この結果、91年のGDP成長率は▲2.5%と、通年では81年以来10年ぶりのマイナス成長となった。

物価面をみると、小売物価(消費者物価に相当)上昇率は、91年10-12月期に前年同期比4.2%となった後、1月も4.1%と落ち着いた推移を続けている。これは、景気減速に伴い雇用調整が進み、労働コスト面からの物価上昇圧力が緩和していることが背景となっている。

国際収支については、91年半ば以降、海外景気の悪化による輸出の減少等から、貿易収支、経常収支ともに再び赤字が拡大する傾向にある。12月の貿易収支は7億ポンド、経常収支は4億ポンドのそれぞれ赤字となった。



<ドイツ経済>

旧西ドイツ地域では景気は減速傾向が持続している。例年10-12月期の実質GNPは、前期比▲0.4%のマイナス成長となり、91年4-6月期以降、3期連続の前期比マイナスとなった。しかし、設備稼働率は依然比較的高い水準にある等、リセッションとは状況を異にしている。

物価面では、2月の生計費(消費者物価に相当)上昇率は前年同月比4.3%となった。労働コスト面からの物価上昇圧カを背景として、生計費の上昇率は年央以降、4%前後で推移し続けている。なお、今後の物価動向は92年春闘で妥結する賃上げ率に大きく影響される。

国際収支面をみると、12月の貿易収支は48億マルクの黒字となった。輸出の増加と輸入の伸び悩みにより、91年8月以降、貿易収支は黒字で推移している。なお、経常収支は、11月には1年ぶりに黒字(17億マルク)に転じていたが、12月は移転収支の悪化により再び赤字となった。

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