1992年02月01日

経済の動き

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<米国経済>

91年7-9月期の実質GDP(確定値)は前期比年率1.8%のプラス成長となった。プラス成長に寄与した項目としては、(1)在庫投資、(2)個人消費、(3)住宅投資が挙げられる。但し、在庫投資を除いた最終需要は同▲0.7%と減少しており、景気実態は依然として低調であることを裏づけた。。

11月の非農業部門雇用者数は前月比▲24万1千人、その内訳をみてもほぼすべての産業において減少している。また、IBMやGM等の大企業が相次いで公表した雇用削減計画の心理的影響も大きく、雇用環境は厳しい状況にある。。

生産関係の指標をみると、10月の鉱工業生産は前月比▲0.4%、設備稼働率も79.1%と前月からともに低下、依然として景気が底這い状態にあることを示している。。

家計部門の指標では、11月の実質消費支出が前月比0.4%%の伸びとなった反面、消費支出に最も影響を与える実質可処分所得は同▲0.5%と減少している。家計部門の高負債残高を考慮すると、可処分所得が持続的に伸びない限り、消費の本格的な回復は見込みにくい。また、個人破産件数も増加している等、消費支出が力強い回復に向かうにはなお時間がかかるものとみられる。。

物価動向については、11月の生産者物価が総合で前月比0.2%の上昇に止まり、消費者物価も同0.4%、エネルギーと食料品を除くコア部分が同O.3%と落ち着いた動きを示している。各部門の需要が弱く、原油価格の低位安定、円高の進行等の経済環境をみても、当面の物価上昇懸念は小さいと考えられる。。

FRBは12月20日に公定歩合を1.0%引き下げて3.5%、FFレートの誘導水準も0.5%引き下げて4.0%とした。今回の下げ幅は市場の予想を上回るものであり、引き下げに際しての声明文の中でも「今回の措置がこれまでの金融緩和による累積的効果に加え、持続的な経済成長のための基盤を提供するはずである」との強い記述もみられる。今回の金融緩和措置を受けて、商業銀行のプライムレートも1%引き下げられ6.5%となった。これらの金利水準は歴史的にも低いものであるが、金融緩和の景気浮揚効果については、現在、以下の相殺要因があると考えられる。(1)家計、企業ともに負債残高が高いため、新たな借入増による消費・投資拡大に向かいにくいこと、(2)商業銀行のクレジットクランチが解消されていないこと、(3)物価上昇率も低い水準にあるため、実質金利水準でみると過去の景気後退期に比べて大幅に低いものではない。このため春頃までにFFレートの下げ余地は残されているものの、その景気刺激効果は限られたものになると予想される。但し、金融緩和の効果にはタイムラグが伴うため、今後はこれまでの緩和効果が徐々に現れてくるものとみられ、92年下期からは景気回復傾向が明確化してこよう。



<日本経済>

○景気は引き続き調整局面

日本経済は減速傾向を持続している。日銀短観(91年11月調査)で景気動向をみると、業況良好感が大幅に低下しており、3月では主要企業製造業のうちの素材業種、中小企業の製造業がともにマイナスに転じる予測。これは予想を上回る需要の落ち込み、利益の下方修正が原因である。また、製造業の在庫水準判断は「過大」超編が予想を上回るテンポで拡大、在庫の予想外の積み上がりを裏付ける形に。こうした需要不振の下、製造業を中心に91年度収益の予測が下方修正へ。なお、以上のような需要状況下にもかかわらず設備投資計画(全国企業計)は7.9%と堅調な伸びとなっている。しかし、機械受注・建設受注等の先行指標がマイナス基調となっており、また「在庫調整の本格化→景気停滞感の強まり」によって、製造業を中心に下方修正される可能性か高い。

需要面から関連指標を見ると、まず消費面では、大型小売店販売額は前年同月比で10月は5.4%増、11月は6.8%増と堅調に推移している。

住宅は11月の新設住宅着工戸数は引き続き前年比で2ケタ減少(▲19.4%)。戸数の水準(季調済・年率)は8月以降130万戸前後での推移(11月は131.2万戸)。

設備投資関連の受注統計は、概ねマイナス基調で推移している。機械受注(船舶・電力を除く民需)は前年同月比で9月▲1.6%、10月▲1.2%とマイナス基調での推移している。


○雇用情勢は穏やかに緩和の方向へ

労働需給は依然逼迫しているものの、有効求人倍率(季調済)は景気減速を反映して足もと11月は1.31倍へ低下した(7-9月期平均は1.38倍)。景気減速は、労働時間(所定外)の減少から、このように求人段階にまで波及しつつあるが、雇用者数は未だ堅調に増加している。


○物価はさらに安定方向へ

国内卸売物価上昇率は前年同月比で11月は▲0.1%とマイナスに転じた。消費者物価(東京都区部)は12月の東京都区部が前年同月比で2.9%上昇。石油製品と生鮮食品を除いたコア部分は、全国・東京都区部ともに2%台後半での推移となっているが、7-9月期は3.0%であった東京都区部の上昇率は12月には2.6%へ若干低下している。


○通関出超幅は高水準・拡大傾向

通関出超幅(季調済・年率)は4-6月期752億ドル、7-9月期833億ドル、11月894億ドルと、高水準での拡大傾向が持続している。



<イギリス経済>

イギリスの91年7-9月期の実質GDP成長率(生産ベース)は、前期比0.3%と、90年4-6月期以来初めてプラスとなった。これにより90年末からのリセッション局面は終了したといえよう。特に消費関連の経済指標を中心に景気回復の兆しが現れており、例えば11月の小売売上数量は前期比1.2%増と、これまでの減少傾向に歯止めが掛かかりつつある。物価動向についてみると、小売物価(消費者物価に相当)は昨年の原油価格高騰による物価押し上げの一巡により、前年同月比でみた物価上昇率は今年8月から低下傾向にあった。しかし、11月にはこうした原油要因の弱まりから物価上昇率は10月の3.7%から4.3%に上昇した。経常収支については、改善傾向が足踏み状態にある。11月の経常収支赤字は▲5.9億ポンドと、10月(5.6億ポンド)より悪化した。これは、国内の消費回復に伴う輸入増加により、貿易収支の改善が一段落していることが主因である。



<ドイツ経済>

旧西ドイツ地域(以下、西独)では景気の減速傾向が強まっている。91年7-9月期の実質GNP成長率は前期比▲0.5%と4-6月期(同▲0.6%)より2期連続のマイナス成長となった。需要項目の内訳をみると、個人消費か前期比▲1.9%と落ち込み、これだけで今期の成長率を1.0%ポイント押し下げた。消費減少の背景には、91年7月からの増税やこれまでの金融引締め政策等の影響があげられる。また、物価面をみると、消費者物価に相当する生計費は、昨年の原油価格高騰による物価押し上げの一巡により、前年同月比では今年8月以降、低下傾向にあった。しかし、こうした原油要因の弱まりから11月以降再び上昇しており、12月には4.2%の高水準となった。国際収支については、7-9月期の経常収支は▲11億マルクと4-6月期から横這いとなった。貿易収支は改善したものの(4-6月期▲7億マルクの赤字、7-9月期39億マルクの黒字)、旅行支払いを中心にサービス面での支払いが増加したことが、経常収支の低迷の原因となった。

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