1992年02月01日

92年度主要産業見通し

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<要旨>

I.産業経済全般の動向

  • わが国経済は景気減速傾向が強まっている。堅調だった個人消費には陰りが見られ、住宅建設も当面底這い状態が続こう。こうした中、企業の設備投資は、稼働率の低下、企業収益の低迷、資金調達環境の悪化等から減速傾向が強まる情勢にある。特に自動車、電機等の製造業の投資抑制傾向が目立っている。ただし、研究開発投資や合理化投資等の独立投資や全体の約7割を占める非製造業部門での底固い動き等から大きく落ち込んでいくことはないと見られる。
  • 最終需要が減退し受注減少傾向が産業経済の各方面で拡がる中、大幅な在庫の積み上がりに対する減産、在庫調整が92年度上半期まで続くと予想される。

II.低迷する企業業績

  • 以上のような状況の中、企業業績は低迷の度合いを深めている。
    91年度の経常利益は造船、建設、小売等一部業種を除き軒並み悪化し、特に鉄鋼、自動車、電機、機械等の主要製造業や証券、不動産の金融関連での落ち込みが大きい。
    需要低迷による売上鈍化の中、労務費、設備投資償却等の固定費負担の高まりや金融収支悪化といった減益要因が強まっている。
  • 92年度も企業業績を取り巻く環境は厳しい。上半期中は調整局面が続き、在庫調整が一巡し金利低下効果の浸透が見られる下半期には回復に向かおうが、売上鈍化とコスト増懸念に加え、バブル崩壊に伴う金融面での制約が引き続き収益圧迫要因となろう。
    業種別に見ると、製造業は92年度上半期も減益基調が続き下半期に底入れしようが、年度計では減益にとどまる可能性が高い。非製造業は底固さが見られるものの、収益の伸びはあまり楽観できない。

III.自動車の不振と各産業への影響

  • 特に加工産業の中では自動車産業の低迷が続くことが懸念材料である。自動車は88年から90年央頃まで約3年弱の間、大幅な販売ブームを記録した。これには循環的な景気要因だけでなく、いわゆる株価上昇等による資産効果が考えられる上、自動車税制改正や軽自動車の規格拡大等の制度的要因の影響が大きかった。これらの効果が一巡化した現在、小型乗用車を中心とした販売不振が続いており、ストック調整的状況にあると言えよう。こうした中、業界の収益力はこれまでの大型設備投資の償却負担もあり大きく低下している。92年度も内外市場の力強い回復は期待できず厳しい経営環境が続こう。
  • 自動車は経済に占めるウェイトが高い(生産額で製造業の1割強、設備投資額で2割強)だけでなく、関連分野の裾野が広く各方面に与える影響も大きいだけにその動向は重要である。ちなみに、自動車の減産は産業全体でその3倍弱の減産効果を持ち、業種ではゴム製品や鉄鋼、非鉄、化学への影響が特に大きい。

IV.注目される不動産不況の今後の動向

  • 一方、非製造業ではいわゆる不動産不況の動向が注目される。不動産業は20兆円を越える過剰資産を抱えており、保有不動産の値下がりによる売却損・含み損、金利負担増大等で経営は大きく圧迫されている。不動産業の業績は大幅に悪化しており倒産も急増している。不動産融資の総量規制は92年1月から解除されたものの、新たに地価税の導入もあり、不動産業界は基本的に92年度も厳しい経営環境が続くことに変わりはない。
  • また、不動産業へ融資している金融機関への影響も小さくないと考えられる。金利受取遅延等に加え、巨額な貸倒れの発生等の信用リスクも高まってきている。特に不動産関連に対して大きな融資残を抱えているノンパンク等ではむしろ今後、不良債権が表面化してくることも懸念される。

V.主要業種別の92年度展望

  • 他の主要業種の92年度の動向を簡単に展望すると、加工型製造業の中の一般機械は民間設備投資の大幅鋭化等から減益基調が続き、電機も高水準の研究開発投資や設備投資が続く中、収益の回復は鈍そうである。造船は豊富な受注残等から92年度も好業績が続こう。また、素材産業でも、鉄鋼が需要減退、在庫増を背景にした減産等から大幅減益が続く見通しとなる他、石油化学や石油精製も生産能力が拡大する一方、需要動向は不透明であり市況低迷等の懸念要因要留が大きい。減産により市況建て直しを図る紙パルプも収益回復は力強さに欠けよう。
  • 非製造業では、建設・住宅は民間からの受注状況が惑化しており、公共投資拡大が期待されるものの、増益率は鈍ろう。大型小売は個人消費に陰りが見られ、出店や改装投資等の負担もあって収益は伸び悩もう。運輸は陸運が値上げ効果、空運がレジャー志向の持続等から増益となろう。情報サーピスは金融業中心に情報化投資が抑制される中、これまでの高成長から屈折し、電気通信も新規参入による競争激化等から収益は伸び悩もう。レジャーは個人の余暇拡大傾向が続いており増益となろう。



  • 以上、総じて言えば産業界を巡る厳しい状況は少なくとも92年度上半期までは続こう。加えて、国際的な経済摩擦の強まりや企業の社会的責任に対する関心の高まりも避けがたく、こうした状況に対する企業経営の舵取りが内外から大いに注目されよう。

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