1991年11月01日

我が国設備投資の中期的展望 ―設備投資の動機面、金融・採算面からみた90年代前半の設備投資動向 ―

米納 嘉継

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<要旨>

  1. 86年11月を「底」に始まった今回の景気拡大局面で、民間設備投資は88~90年度に3年連続2ケタの高い伸びを示した。
    その特徴として、高い伸びと高いGNP比率、高水準の設備不足感、業種や企業規模問わない広範囲な増加、旺盛な研究開発・技術革新投資―といった点が指摘されよう。
    その背景には、内需の拡大と企業収益の好調、さまざまな投資ニーズ、入手不足感の増大と資本財価格の安定の下での旺盛な労働代替意欲―があった。
  2. 足本91年度においては、89年5月以降の金融引き締めの効果による投資の採算性の悪化等から設備投資は減速するため、短期の景気循環論的には一時的に調整局面を迎えることになろう。
  3. しかし、中期的観点からは、これまでの高水準の設備投資にもかかわらず、深刻な設備過剰に陥る懸念は小さい。そして中期的・構造的な労働力人口の伸び率低下や労働時間短縮という社会的な要請の下、積極的な「労働代替投資」が見込まれるとともに、「更新投資」による下支えや「研究開発投資」といった独立的な投資動機によって、我が国の民間設備投資は実質ベースでGNP成長率よりは高めの伸びを示す可能性が高い。
  4. 一方、企業金融面では、BIS規制による銀行の貸出選別・抑制スタンスの強まりや、エクイティ債の償還資金の確保に加え、中金利時代の下での投資採算性の低下等、いくつかの懸念要因も存在する。しかし、SNAベースの資本調達勘定を用いてのマクロ的な資金需給の試算結果によれば、マネーサプライの伸びが6~7%程度であれば、実質GNP成長率よりも高めの設備投資の伸びを、企業金融面から支えることができよう。
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