1991年09月01日

経済の動き

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<米国経済>

'91年第2四半期の実質GNPは前期比年率0.4%のプラス成長となり、景気の底入れが確認された。特に個人消費、住宅投資がそれぞれ同3.6%、3.7%増加しており、概ね過去の景気回復初期(戦後8回の「谷」を含む2四半期平均)のパターンと類似している。但し、両部門とも回復度合いは弱いものとなっている。

7月の雇用統計では、失業率は6.8%と前月に比べ0.2%低下した。しかし、非農業部門雇用者数は前月比▲5万1千人の減少と2ヵ月連続で減少し、週平均労働時間も34.1時間と前月に比べて0.4時間の減少となり、景気回復力が弱いことを示している。

生産関係の指標をみると、6月の鉱工業生産は前月比0.7%増と3ヵ月連続で増加、設備稼働率も79.3%と前月比で0.3%上昇しており、回復速度は緩やかなものの、生産部門では回復基調が続いている。

家計部門の指標をみると、6月の実質可処分所得は前月比0.4%増加した。また、実質個人消費支出も同0.4%と、5月に引き続いて増加した。

また、国内自動車販売台数も4月の550万台(季節調整済年率換算)を底に増加基調に転じ、7月は684万台となった。但し、前年比では▲4.0%、輸入車を含めた全体の販売台数でみても同▲5.6%と依然として前年の水準を下回る状態が続いている。一方、6月の消費者信用残高は自動車ローンを中心に2ヵ月連続の減少となった。家計部門の借金体質を背景に、消費者信用の拡大による消費拡大には限界があるとみられ、今後の消費動向は過去の景気回復局面に比べて、緩やかなものにとどまろう。

物価動向については、6月の消費者物価上昇はエネルギー価格の下溶を主因に前月比0.2%と落ち着いた動きとなった。食料品、原油価格を除いたコア・インフレ率は同0.4%とやや高めとなったが、これは、(1)州税引き上げによるタバコ価格の急騰、(2)郊外宿泊費の上昇、等の一時的要因によるところが大きい。グリーンスパンFRB議長は7月16日の議会証言において「ここ数ヵ月インフレ鈍化の兆しが出ている」と述べ、今後の物価動向について楽観的な見方を表明しているように、当面、物価の安定基調は持続すると予想される。

金融面では、FRBは8月6日、第3四半期の定例国債入札の直前に金融緩和を実施し、FFレートを0.25%引き下げ、公定歩合と同水準である5.5%とした。物価の安定基調に加えて長期金利が8%台前半に低下したほか、景気の回復力が弱いことを示す内容の指標(雇用統計、小売売上高、耐久財受注、製造業受注等)が発表されたことから、FRBは短期金利の引き下げに踏み切ったものと見られる。但し、今後の金融政策としては、景気は緩やかであるが回復局面に入ってきたこと等から、昨年秋以降の連続的な金融緩和が実施される可能性は小さいものと予想される。



<日本経済>

○景気の減速が明確化

日本経済は減速傾向を持続している。鉱工業生産指数は'91年1-3月期(▲0.1%)に続き4-6月期もマイナス(▲0.6%)になった。暖冬による個人消費の伸び悩みや自動車輸出の減少といった要因の直接的影響がないとみられる「自動車関連除きの」生産指数でみても4-6月期は減少。

需要面から指標を見ると、住宅着工の減少や設備投資関連指標の鈍化傾向等から景気の減速傾向持続を確認できる。

6月の新設住宅着工戸数は引き続き前年比で2ケタ減少(▲21.6%)。戸数の水準(季調済・年率)は3月以降140万戸前後で横這いとなっているが、底入れかどうかは不明確である。

設備投資関連の受注統計は、春以降は概ねマイナス基調で推移している。機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比で3月は3.6%減、4月も3.6%減、5月はやや戻して3.0%増。また建設工事受注高は前月比で4月に15.4%減、5月は7.3%減、6月は3.4%減となっている。

○タイトな労働需給

労働需給は極めて逼迫している。有効求人倍率(季調済)は景気減速を反映して足もと6月は1.43倍と、3月のピーク(1.47倍)からは若干低下しているものの、依然高倍率のまま推移している。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も、6月は前年比3.9%と高めの伸びを見せている。

○物価上昇はピーク・アウトの兆し

国内卸売物価上昇率は6月に前年比2.1%と、低下傾向を示している。消費者物価(東京都区部)は5月をボトムに前年比で上昇(7月は3.7%)し、石油製品と生鮮食品を除いたコア部分も、4、5月をボトムにやや強含んでいる。これは生鮮食品の値上がりに加えて、消費者物価指数の構成品目のひとつである「持家の帰属家賃」が、通常の家賃と大きく乖離した形で6、7月に急上昇したことが原因であり、コア部分からさらにこれを除去すると、前年比上昇率は概ね横這いとなる。国内卸売物価、消費者物価ともにピーク・アウトの兆しを見せている。

○貿易収支黒字幅の拡大には一服感

6月の貿易収支黒字幅(IMFベース)は約983億ドル(季調済・年率)で、拡大の動きが1-3月期以降一服状態にある。これは、数量ベースの貿易収支が、既に1月以降縮小傾向に転じていることに加え、輸入石油価格の低下(4月以降は横這いで安定)、春先の2-3月に進んだ為替円安によるドル建て輸出価格上昇(前月)の効果が一巡したことが原因である。



<イギリス経済>

イギリスの景気は依然後退局面にある。今年4-6月期の新車登録台数、小売売上数量は前期比で各々▲12.7%、▲0.9%となり、1-3月期(同各々▲7.5%、0.8%)より悪化した。

物価動向についてみると、消費者物価に相当する小売物価の前年同月比は、昨年4月に導入されたコミュニティー・チャージ(人頭税)による物価押し上げ要因の剥落から、今年4月に前月より1.8%ポイントと大幅に低下した。その後、金融緩和に伴うモーゲージ金利の引き下げに伴いさらに低下し、6月は5.8%となった。小売物価指数全体から「モーゲージ金利支払い」項目を除いたコア部分の上昇率は4月以降6%台後半の水準で横這いで推移している。

国際収支面では、6月の経常収支は2千億ポンドと約4年ぶりに黒字に転じた。これは、自動車、化学製品等の製品輸出が顕著に増加し、貿易収支が改善したことが主因である。



<ドイツ経済>

旧西独の景気は依然堅調に推移しているものの、今年1-3月期にピーク・アウトした模様である。今年4-6月期の鉱工業生産は前期比▲0.5%と減少した。

消費者物価に相当する生計費は、今年4月以降、伸び率が加速する傾向にある。また、7月は石油税増税や電話料金の引き上げの影響で、前期比O.9%の大幅上昇となった。前年同月比では4.4%となり、これは第2次石油ショック後のインフレ収束局面であった'82年12月(4.6%)以来の高水準である。

国際収支面では、(1)旧東独需要の拡大による輸入の増加、(2)世界景気の後退による輸出の減少により貿易収支は悪化傾向にあり、5月は▲14億マルク(季調値)と約10年ぶりの赤字となった。これに伴い経常収支も悪化しており、今年上期は▲201億マルクの赤字(未季調値)となり、昨年同期(494億マルクの黒字)に比べ大幅に悪化している。

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