1991年08月01日

経済の動き

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<米国経済>

経済指標によってややばらつきはあるが、生産、雇用、分配、支出の各側面で景気の底入れを示すものが増えており、今後の焦点は「景気回復力の強さ」に移りつつある。

6月の雇用統計では、失業率は7.0%と前月比0.1%上昇し、非農業部門雇用者数も前月比5万人の減少となった。但し、週労働時聞は5、6月とも前月比で増加、時間当たり賃金も2月以降、増加傾向にある。通常、景気回復の初期段階においては、雇用者数の拡大に先立って労働時間が増加する傾向が見られ、今回の2ヵ月連続の労働時間の増加も景気底入れの兆しとして注目されよう。

生産関係の指標をみると、5月の鉱工業生産は前月比0.5%増と2ヵ月連続で増加した。設備稼働率も78.5%と前月比で0.2%上昇している。

家計部門の指標をみると、5月の実質可処分所得は前月比0.3%増加した。一方、実質個人消費支出は同0.9%増加しており、猛暑による消費の前倒し需要もあって、消費の伸びが所得の伸びを上回った。

また、国内自動車販売台数も、4月の550万台(年率換算値)を底に増加基調にあり、6月は672万台(同)と回復の兆しが見えている。

物価動向については、5月の消費者物価は前月比0.3%上昇、変動の大きい食料・エネルギーを除いた消費者物価コア部分で見ても、同0.2%上昇となっており、物価は落ち着いた動きを示している。

金融面では、長期金利が依然として下げ渋りの状態にある。長期金利の高止まりは、銀行部門のクレジットクランチと併せて、今後の景気回復力の抑制要因として作用すると考えられる。今後、FRBの金融政策としては、基本的には現状維持のスタンスをとり、景気の回復を見守る姿勢を堅持すると考えられる。



<日本経済>

○景気の減速が明確化

日本経済は減速基調にある。今年1-3月期の実質GNP成長率は前期比年率11.2%となり、昨年10-12月期の同2.6%と比較して、見かけ上は高成長となった。しかし「投資収益・受取の前倒し」、「湾岸戦争による旅行収支赤字の縮小」、「(昨年10-12月期に大幅減となった)公的在庫の特異な増加」の特殊要因によるカサ上げ部分の寄与度約4%を除いた実勢ベースの成長率は7%程度と思われる。

次に4-6月期について、関連統計を見ていくと、まず個人消費関連の指標では、5月の大型小売店販売額は前年比5.5%増と堅調な伸びを示した。なお、6月の新車登録台数・乗用車(軽自動車含む)は同11.0%減とマイナス幅を拡大している。

設備投資は、日銀短観(5月調査)の'91年度設備投資計画調査によると、主要企業では製造業が前年比6.2%増、非製造業が同7.7%増、また中小企業においては製造業が同6.6%増と、堅調な計画となっている。ただし、中小企業非製造業については、▲12.5%と大幅なマイナスになっており、当該業種の純金融負債比率の高さも考え併せると先行きの懸念材料であろう。

住宅関連の指標をみると、住宅着工戸数は金利上昇などの影響で、前年比の伸び率は低下基調を辿り、5月は季調済年率で141.9万戸と、'90年度の166.5万戸からベースが大幅に落ち込んでいる。

○タイトな労働需給

労働需給は依然、逼迫している。5月の有効求人倍率(季調済)は1.44倍であり、3月のピーク(1.47倍)からは若干低下しているものの、依然高倍率のまま推移している。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も、5月は前年比3.7%と高めの伸びを見せている。

○依然根強い賃金コスト面からの物価上昇圧力

5月の輸入物価は、前月比で5ヵ月連続の下落となった。また国内卸売物価と関連の深い日経商品価格指数も、昨年9月以降下落基調にある。このように輸入国、国内需給面からの物価上昇圧力はかなり低下してきている。

なお、労働コスト面からの物価上昇圧力は依然残るものの、コア部分で見た上昇率が、国内卸売物価、消費者物価ともにピーク・アウトの兆しを見せている。

○通関出超幅は前年比で増加

5月の通関出超幅は約58億ドル(季節調整後)となった。3月は73億ドル、4月は60億ドルであり、これまでの比較的急テンポな黒字拡大傾向にやや一服加減の兆しが出てきた。数量ベースの貿易収支が縮小傾向にある乙と、原油入着価格が下げ止まったこと等が背景にある。



<イギリス経済>

イギリスでは、依然、景気後退が続いている。'91年1-3月期の実質GDP成長率は前期比▲O.6%と、昨年の7-9月期以来、3四半期連続の落ち込みとなった。こうした中で、政府は昨年10月より金融緩和を進めており、今年下期には金融緩和の効果等から景気はボトム・アウトするとの見方を示している。

物価動向についてみると、消費者物価に相当する小売物価は、昨年10月に前年同月比10.9%とピークをつけた後、改善傾向を辿り、今年5月には5.8%にまで低下した。これは、(1)原油価格の下落、(2)昨年4月に導入された人頭税(コミュニティー・チャージ)による物価押し上げ要因の剥落、(3)金融緩和に伴う住宅ローン金利低下(イギリスの小売物価にはモーゲージ金利支払いが含まれる)等が要因となっている。

貿易面をみると、輸出の伸び悩み、輸入の減少テンポのスローダウン等から貿易赤字の改善傾向にやや一服感が出てきており、今年5月の貿易赤字は9.2倍、ポンドと、4月(8.4億ポンド)より悪化した。



<ドイツ経済>

旧西ドイツ地域(以下、西独)の景気は依然堅調に推移しているものの、景気拡大は頭打ち状態にある。鉱工業生産は今年1-3月期に前期比で2.0%増となった後、4月、5月は前月比マイナスが続いている。今後は、増税、世界景気の減速等の影響から景気は減速に向かう見込みである。

消費者物価に相当する生計費上昇率(前年同月比)は、原油価格の下落に伴い、昨年末より低下傾向にあったが、4月より再び上昇している。6月の物価上昇率は3.5%と'83年4月(3.9%)以来の高い伸びとなった。今後も、(1)高率の賃上げ等による労働コストの上昇、(2)年初からの対ドルでのマルク安、(3)今年7月の間接税増税―等の影響からインフレ圧力が強まろう。

貿易面では、(1)世界景気の減速およびソ連・東欧経済の混乱による輸出の減少、(2)内需堅調に伴う輸入の堅調―等から、貿易収支の黒字は減少傾向にあり、4月の黒字額(季調値)は8億マルクにとどまった。尚、未季調値では4月以降2ヵ月連続で赤字となった。

旧東独地域(以下、東独)では経済の悪化が続いている。今年2月の鉱工業生産は前年同月比▲66.3%と大幅な落ち込みを示した。雇用情勢も悪化しており、5月の完全失業者数は84万人、失業率は9.5%、また、操業短縮対象の労働者数は196万人に達した。昨年7月の通貨統合の際、多くの企業は1年間の解雇猶予期間を設定したという経緯があり、期限切れを迎える7月にはさらに失業者が急増する見込みである。



<オーストラリア経済>

オーストラリア経済は、長期間の高金利政策の影響で、内需の悪化が続いている。

個人消費関連の指標をみると、消費者マインドは依然として弱く、4月の小売売上高は前期比▲2.9%の減少となった。また、5月の新車登録台数は前期比▲4.3%の減少となった。雇用情勢が依然厳しく、消費の低迷が当面続こう。

一方、住宅投資についてみると、ようやく回復の兆しがみられてきた。4月の住宅用資金貸出額は前月比21.4%と大幅な増加となった。また、5月の住宅着工認可件数も前月比10.6%の増加となった。

5月の貿易収支(季節調整値)は、輸出が6%の拡大となったこと、輸入が9%の減少となったことを背景に、4月の0.3億豪ドルの赤字から6.2億豪ドルの黒字へと改善した。原数値ベースでみると、この黒字幅は7.0億豪ドルと過去最大の黒字である。経常収支の赤字もその影響を受け、4月の15.5億豪ドルから8.6億豪ドルへと大幅に縮小した。

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