1991年05月01日

経済の動き

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<米国経済>

米国経済は、昨年10-12月期に続いて、'91年1-3月期もマイナス成長になったものと見られる。

3月の雇用統計は依然として景気が低迷していることを示す内容だった。失業率は前月比0.3%上昇して6.8%となり、非農業部門雇用者数も前月比▲20.6万人と前月の▲29.1万人(改訂値)に引き続き大幅な減少となった。

生産関係の指標を見ると、2月の鉱工業生産は前月比▲O.8%と10月から5ヵ月連続して減少となった。生産の減少を受けて、設備稼動率も2月は79.1%と低い水準となっている。設備稼働率は昨年7月以来、7ヵ月連続で減少している。

家計部門をみると、2月の実質可処分所得、実質消費とも、それぞれ前月比0.1%、0.4%、と増加しているものの、前年同月比では▲1.3%、▲0.7%の減少と依然としてマイナスの伸びとなっている。3月の消費者コンフィデンスは81.0と前月の59.4から大幅に改善した。但し、(1)今後、実質可処分所得が大幅に増加することは期待し難いこと、(2)貯蓄率が4.6%(2月)と低い水準にあること、(3)消費者信用残高の対可処分所得比が'86年以降、18%台で高どまりしており、借入増による消費拡大の余地も小さいと判断されること―等を考慮した場合、消費増加による景気の急速な回復は難しいとみられる。

一方、2月の住宅着工件数は前月比16.4%と、昨年1月の21.8%増以来の大幅な増加となった。但し、地域別に見ると、中西部が好調であった一方、西部が'82年8月以来の低い水準を記録しており、本格的な回復とはまだ言えない状況にある。

物価動向については、2月の消費者物価は前月比0.2%と落ち着いた伸びを示しているものの、変動の大きい食料・エネルギーを除いたコア部分は、一時的要因もあって、前月比0.7%と1月の0.8%に続いて高めの伸びとなった。

FRBによる1-3月の銀行貸出調査によると、融資基準を強化したのは調査対象となった米銀58行のうち23%と、過去2回の調査に比べて減少している。しかし、現在の金利水準においても、依然として23%の銀行が貸出基準を強化していることや、融資基準を緩和した銀行は1行もないことから、依然としてクレジット・クランチは続いていると見られる。一部で、グリーンスパン議長のFRB内での権限低下のため、金融緩和が遅れているとの見方があるが、物価動向に配慮しつつも、景気てこ入れのため、いま一段の金融緩和が期待される。



<日本経済>

○景気は引き続き堅調

日本経済は景気減速が明確となった。実質GNPは前期比、前年同期比ともに減速傾向にある。とりわけ、'90年1O-12月期の成長率は、内需(消費、住宅投資、庄庫投資)の落ち込みにより前期比O.5%(同、年率2.1%)と大きく低下した。

この'90年1O-12月期の減速には、(1)統計技術的な側面の強い公的在庫の減少(寄与度▲0.3%)、(2)暖冬による消費の不冴え、等の一時的要因も影響しているが、金融引締めの影響等により趨勢的にスローダウンしていることは確かであろう。

'90年10-12月期の実質GNPの伸びを需要項目別に見ていくと、まず消費は前期比▲0.3%であった。これは、所得環境は良好(同時期、名目賃金は前年比4.9%、雇用者数は同0.4%の高めの伸び)なものの、消費者物価上昇や天候不順等がマイナスに影響したことが原因と思われる。

一方設備投資は、前期比3.1%増と引き続き好調であった。ただし、金利コスト・企業収益といった投資採算面、あるいは資金調達面から判断すると、先行きの減速が予想される。各種設備投資計画調査や、先行指標としての関連統計(機械受注、建設着工床面積等)の直近の推移もそのことを示唆している。

住宅投資は前期比▲1.6%とマイナスになった。これは、これまでの金利高や地価下落予想によるものである。新設住宅着工戸数の推移も、昨年11月以来前年比で減少(2月は同▲12.5%)を続けており、当面増加に転ずることは予想しにくい。

○景気減速にもかかわらず緩和の兆しがない労働需給

景気の減速基調にもかかわらず、労働需給は似然として逼迫が持続している。2月の有効求人倍率(季調済)は1.46倍と、低下の兆しは一向にみられない。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も高めの伸びを見せており、消費にとっては好環境である反面、物価面への影響が懸念されるところである。

○物価上昇のピーク・アウトは未だ

この結果、賃金コスト面からの物価上昇圧力は依然根強い状態となっている。前年比上昇率は、国内卸売物価(総平均)は1月の2.6%⇒3月(上・中旬平均)の2.3%、また消費者物価(東京都区部)は1月の4.3%⇒3月(中旬速報値)の3.7%という推移であり、一見ピーク・アウトしたかのようにも見える。

しかし、石油製品や生鮮食品、農林水産物を除外したコア部分の推移は、国内卸売物価(総平均)は1月の1.9%⇒3月(上・中旬平均)の2.0%、また消費者物価(東京都区部)は1月の3.2%⇒3月(中旬速報値)の3.3%であり、未だピーク・アウトを確認できる状況ではないようである。

ただし、今後の物価動向に重大な影響力を持つ春闘賃上げ率については、JC・IMFの回答が'90年度を概ね0.4%ポイント下回る水準となった乙とから、平均5.5%程度に収まる見込みである。このため、賃金コスト面からの物価上昇圧力が大きく加速する懸念はなくなったといえよう。

○通関出超幅は増加傾向

3月の通関出超幅は約75億ドル(季節調整後)で、2月の約51億ドルを大きく上回り、拡大傾向を辿りつつある。これは、(1)それまで、輸出数量指数の伸びが依然高い一方で、輸入数量指数の伸びが景気減速・内需鈍化を映じて低下してきたこと、(2)輸入原油価格が前月に引き続き大幅儀落(1バレル19.1ドル)となったこと、等のためである。



<イギリス経済>

イギリス経済は景気の鈍化傾向が続いている。'90年10-12月期の実質GDP成長率は前期比▲0.9%と、7-9月期の同▲1.6%に続きマイナスの伸びとなった、この結果、'90年の成長率は0.7%に止まった('89年は1.9%)。

今年のGNP成長率について、政府は▲2.0%に落ち込むとの悲観的な見通しをたてている。

小売物価(消費者物価に相当)の前年同期比上昇率でみたインフレ率は、'90年10-12月期の10.0%から'91年1月には9.0%、2月8.9%と徐々に低下している。これは、11月以降の原油価格の低下、公定歩合引き下げによるモーゲージ金利の低下(イギリスの小売物価にはモーゲージ金利支払いが構成項目として含まれている)などの影響によるものであり、潜在的なインフレ圧力は依然根強いものと思われる。

貿易収支は、輸出の増加、輸入の減少から改善傾向にある。2月期の貿易赤字は6.9億ポンドと、昨年10-12月期の月平均(9.7億マルク)を下回った。



<ドイツ経済>

旧西独地域(以下、西独)の'90年10-12月期の実質GNP成長率は前期比1.4%、前年同期比4.8%の高い伸びとなった。この結果、'90年の成長率は4.5%と'76年(5.6%)以来の高成長となった。

今年のGNP成長率について政府は、7月から実施される増税の影響で、当初見通しより0.5%ポイント低い2.5~3%になるとの見通しを発表した。

生計費(消費者物価に相当)の前年同月比上昇率でみたインフレ率は、原油価格の下落に伴って低下傾向を辿り、2月には2.7%にまで低下した。しかし、マネーサプライの増加、対ドル・マルク安、労働コストの上昇、一層の財政赤字拡大の可能性など、潜在的なインフレ圧力は依然根強い。

今年1月の経常収支(未季調値)は5年5ヵ月ぶりに赤字に転落した。これは、内需の拡大などによる貿易収支の悪化を主因としている。

旧東独地域(以下、東独)では経済の悪化傾向が続いている。

昨年10-12月期の鉱工業生産は、前期比▲4.5%、前年同期比▲50.9%と大幅に減少した。これは東独製品に対する需要の低迷、労働者の減少等によるものである。

雇用情勢も悪化の一途を辿っており、2月の失業者数は79万人、失業率は8.9%となった。また、同月の操業短縮対象の労働者数は190万人に達していることを考慮すると、実質的には東独労働者の3分の1が失業状態にあると言える。



<オーストラリア経済>

オーストラリア経済は、長期にわたる高金利政策の結果、内需が一段と悪化している。

'90年10-12月期の実質GDP(前期比)は、内需の寄与度が▲1.3%となった一方、外需の寄与度が2.0%となった結果、全体では0.6%となった。国内需要は3四半期連続でマイナス成長となっている。その内訳をみると、民間消費が7-9月期の0.5%の伸びから横這いへ弱まり、往宅投資、機械設備投資、一般政府投資はいずれも、▲4%台の伸びとなった。最大のマイナスの寄与度を与えた公社投資部門は、国営航空会社が航空機購入を大幅に減らしたことなどから、▲15.6%の減少となった。

景気後退が進んでいる中、雇用情勢は急速に悪化しつつある。2月の失業率は8.7%と、1月の8.3%(昨年1月の6.4%)から大幅に上昇した。雇用状況の悪化が個人所得や消費者信頼感を抑制する中、国内景気は急速には回復しないと思われる。

一方、'90年10-12月期の消費者物価上昇率はガソリン価格などの一時的な上昇を背景に、前期比2.7%(前年同期比6.9%)と、'90年7-9月期の前期比0.7%(前年同期比6.0%)から上昇した。

豪州準備銀行は、国内景気の悪化と物価が鎖静化に向うとみられることから、金融緩和をさらに実施し、4月4日キャッシュ・レートを12%から11.5%へ引き下げた。

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