1991年04月01日

経済の動き

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<米国経済>

米国経済は景気後退局面にあるものと見られる。'90年10-12月期の実質GNP(一次改定値)は前期比年率▲2.0%だった。その内訳をみると個人消費▲2.9%、設備投資▲1.3%、住宅投資▲18.5%と軒並み減少している。これに対して、政府支出は4.2%増、うち国防支出は湾岸戦争の影響を受けて8.3%増加した(7-9月期2.7%増)。また輸出は、7.1%増、輸入9.7%増となったことから、純輸出は185億ドルの赤字で、前期から280億ドルの大幅な改善を示した。

生産関係の指標を見ると、1月の鉱工業生産は前月比▲0.4%と10月から4ヵ月連続して減少となった。生産の減少を受けて、設備稼動率も12月の80.4%から1月は79.9%へと低下、7月から7ヵ月連続で低下した。

家計部門をみると、個人消費、住宅投資ともに低迷している。1月の実質可処分所得、実質個人消費はそれぞれ前月比▲0.9%、▲1.1%、前年同月比では▲1.3%、▲1.0%の減少となった。湾岸戦争の終結によって消費者コンフィデンスが改善し、消費が急速に回復するとの見方もあるが、実質所得の伸びが高まらない限り、個人消費の回復は限られたものとなろう。1月の住宅着工件数は前年同月比▲12.8%となり、'82年1月以来の最低水準にまで落ち込んだ。

物価動向については、1月の生産者物価、消費者物価は前月比でそれぞれ▲O.1%、0.4%の上昇率となり、落ち着いた動きを示した。

貿易動向をみると、12月の貿易赤字額は輸出が前月比2.1%の減少する一方、輸入は同7.9%の大幅減少となり、69.5億ドルと前月の891億ドルから大幅に改善した。輸入の減少は主としてリセッション下にあるとみられる米国景気の低迷を反映したものと判断される。

グリーンスパンFRB議長は、3月6日に下院歳入委員会で議会証言を行った。このなかで「今回のリセッションは、原油価格の低下、湾岸戦争の終結に伴う消費者、企業家心理の改善等により、過去のリセッションに比べてマイルドなものとなろう。」との見通しを明らかにした。しかし、2日後の8日に発表された雇用統計の悪化を受けて、FRBは即日FFレートの目標水準を0.25%引き下げ、6.0%とした。このためFFレートと公定歩合が同水準となったため、今後は公定歩合の引き下げが予想されるが、その変更幅、タイミングが注目される。当面、FRBは、3月以降の経済指標、信用状況を注視しつつ、柔軟に対処していくものと予想される。



<日本経済>

○景気は引き続き堅調

日本経済は足元堅調に推移しているが、景気の「変化」という点では依然と比べてかなり減速感が出ている。直近の生産指数の推移も、前年比では7.3%の上昇(1月)となっているが、前月比の推移では横這い圏に入っていると思われる。

しかし、日銀・短観(2月調査)によれば、業況判断DIは低下しつつあるとはいえ依然高水準を持続している。

個人消費関連の指標を見ると、1月の大型小売店販売額は前年比8.2%増と高い伸びとなった。ただ、2月の新車登録台数・乗用車(軽自動車含む)は前年比0.6%増にとどまり、かな翳りが見られる。

設備投資動向を日銀・短観(2月調査)の設備投資計画で見てみると、'90年度下期においては前回調査(昨年11月)比で上方修正されるなど堅調だが、'91年度計画は2月調査としてはかなり低く、わずか1.1%増(主要企業)にとどまっている。

住宅関連の指標をみると、住宅着工件数は金利上昇などの影響で、前年比の伸び率は低下基調を辿り、1月は3ヵ月連続マイナスで4.2%の減少に。住宅着工件数は今後も減少傾向で推移しよう。

○引き締まった労働需給

労働需給は極めて逼迫している。1月の有効求人倍率(季調済)は1.44倍であり、景気の減速感が強まっているにもかかわらず、依然高倍率のまま推移している。

労働市場のタイト化を映じて、名目賃金指数(全産業、ボーナス等込み)も高めの伸びを見せており、消費にとっては好環境である反面、物価面への影響が懸念されるところである。

○消費者物価前年比4%近辺の上昇率

1月の輸入物価は、前月比でようやく下落に転じた。一方1月の国内卸売物価は、前月比0.2%の上昇(同2.6%の上昇) と、消費税導入の影響で高くなった時期を除けば'81年3月の3.7%(前年比)上昇以来の高い上昇率となった。人件費・物流費の価格転嫁の動きが広まったことが主因である。

1月の消費者物価(全国総合指数)は前月比で0.8%(前年同月比3.8%)上昇。石油や生鮮食品除きのコア部分では前年同月比3.1%と、警戒線の3%を越えた。

○通関出超幅は前年比で増加

1月の通関統計は、出超幅が約51億ドル(季節調整後)となった。輸出数量指数の伸びが依然高い一方、輸入数量指数の伸びが景気減速・内需鈍化を映じて低下してきたことも大きい。1月の輸入原油の単価は1バレル28.6ドルで、昨年11月の34.1ドルをピークに下落へ。



<イギリス経済>

イギリス経済は企業部門を中心に景気鈍化傾向が続いている。'90年のGDP成長率は上半期に前年同期比1.9%、7-9月期に同0.5%の後、10-12月期には同▲1.1%(暫定値)に落ち込んだ。

また、10-12月期の設備稼働率は84.0%と7-9月期の86.2%よりさらに大きく落ち込んだ。雇用面では、1月の失業率は6.6%となり、'90年10-12月期の6.2%から悪化した。

小売物価(消費者物価に相当)の前年同期比上昇率でみたインフレ率l土、'90年10-12月期の10.0%から'91年1月には9.0%に低下した。これは、11月以降の原油価格の低下、公定歩合引き下げによるモーゲージ金利の低下(イギリスの小売物価にはモーゲージ金利支払いが構成項目として含まれている)などの影響によるものである。

貿易収支は、輸出の増加、輸入の減少から改善傾向にある。10-12月期の貿易赤字は月平均で9.7億ポンドとなり、7-9月期(12.9億マルク)を下回った。



<ドイツ経済>

旧西独地域(以下、西独)の'90年10-12月期の実質GNP成長率は前期比1.4%、前年同期比4.8%となり、この結果、'90年の成長率は4.5%と'76年(5.6%)以来の高成長となった。この内、統一特需などを受け、内需がGNP寄与度で4.6%と好調に推移した一方、外需の寄与度は、輸入の急伸により▲0.2%となった。内需の中では特に個人消費と設備投資が好調であった。

生計費(消費者物価に相当)の前年同月比上昇率でみたインフレ率は、原油価格の下落に伴い低下してきたが、12月以降下げ渋っており、2月も2.8%と同水準となっている。

3月7日発表の年次経済報告の中で政府は、湾岸戦費拠出、東欧経済支援および東独再建の資金確保のための増税の影響から、'91年の西独のGNP成長率は約0.5%引き下げられ2.5%~3.0%に、また、インフレ率は約0.5%加速され3.5%程度になると予測している。

旧東独地域(以下、東独)では経済の悪化傾向が続いている。鉱工業生産は、'90年4-6月期に前年同期比▲9.5%、7-9月期同▲48.1%、また10月も前年同月比▲50.8%と大幅な落ち込みが続いている。これは東独製品に対する需要の低迷、労働者の減少等によるものである。

また、雇用情勢も悪化の一途を辿っており、'91年2月の失業者数は79万人、失業率は8.9%となった。さらに、2月の操業短縮対象の労働者数は190万人に達していることを考慮すると、実質的には東独労働者の3分の1が失業状態にある。



<カナダ経済>

カナダ経済は減速傾向となっている。7-9月期の実質GDPが前期比年率▲1.0%の低下を示し、4-6月期(同▲1.2%低下)に続き2四半期連続のマイナス成長となった。カナダ経済はリセッション入りしていることが確認された。

物価動向をみると、消費者物価は11月原油価格上昇の影響により、前年同月比で5.0%と5%台の上昇となった。12月前月比では弱含んだものの、前年同月比では同水準の5.0%の上昇率となっている。

国内景気の減速傾向は強まっているが、物価上昇圧力は、依然、高い水準で推移している。また、'91年1月1日より財・サービス税(大型間接税の一種、7%)の導入による物価上昇圧力の高まりにも警戒する必要がある等から、当面、本格的な金融緩和は期待しがたい環境とみられる。



<オーストラリア経済>

オーストラリア経済は、長期にわたる高金利政策の結果、景気鈍化が続いており、リセッションに入っている。

'90年7-9月期の実質GDP(前期比)は、内需が▲O.1%の減少となる一方、外需の成長寄与度が▲1.5%となった結果、全体では▲1.6%と2四半期連続でマイナス成長となった。内訳としては、個人消費が前期比0.3%の伸びと前期の0.6%伸びから弱まり、民間固定資本形成が同0.2%とほぼ横這いに動くとともに、民間非農業部門在庫が同▲0.8%と大幅なマイナス成長寄与度となった。

景気の動向をみると、1月の失業率が前月の8.1%から8.4%へと引き続き上昇し、小売売上が鈍化、新車登録台数が大幅に低下している。ただし、1月の往宅着工認可件数(季節調整値)が10.1%の増加となり、ようやく底打ち感を示している。

一方、物価については、10-12月期の消費者物価上昇率が前期比2.7%(7-9月期同0.7%)、前年同期比6.9%(7-9月期同6.0%)と前期から上昇したものの、その主因はガソリン価格の一時的な上昇であった。政府の賃金抑制政策が実施されている中、コア・インフレは改善傾向を辿ろう。

財政については、景気後退や減税等の結果、当初予算の81億ドルの赤字に比べ、拡大する可能性もある。

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